JIS H 7001 最新規格 形状記憶合金用語|JIS規格 一覧|改正 更新情報|制定
JIS H 7001 形状記憶合金用語の規格 JISH7001の基本・名称・用語・知識・熱処理とその他の処理 ,形状記憶特性・超弾性特性 ,基礎物性・特性・JIS最新改正更新情報に関して解説!
JIS H7001:2009の規格は,形状記憶合金に関する主な用語及び定義について規定。
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形状記憶合金用語 規格 一覧表

形状記憶合金用語の一覧
最新 JIS H7001 規格の詳細 更新日 情報
JIS H 7001:2009の最新の詳細や改正,更新日の情報!
JIS 改正 最新情報
| JIS規格番号 | JIS H7001 | JIS改正 最新・更新日 | 2009年04月20日 |
|---|---|---|---|
| 規格名称 | 形状記憶合金用語 | ||
| 英語訳 | Glossary of terms used for shape memory alloys | ||
| 対応国際規格 ISO | |||
| 主務大臣 | 経済産業 | 制定 年月日 | 1989年03月01日 |
| 略語・記号 | No | JIS H7001:2009 | |
| ICS | 01.040.77,77.120.99 | JISハンドブック | |
JIS規格「日本工業規格」は、2019年7月1日の法改正により名称が「日本産業規格」に変わりました。
適用範囲 [1]
この規格は,形状記憶合金に関する主な用語と定義について規定する。
用語の分類 [2]
用語の分類は,次のとおりとする。
- a) 基礎物性・特性
- b) 形状記憶特性・超弾性特性
- c) 熱処理とその他の処理
用語と定義 [3]
用語と定義は,次による。
なお,参考のために対応英語を示す。
注記 定義の説明の中で( )を付けてあるものは,同義と略号の場合,又は前の用語を置き換える場合の二通りがある。
a) 基礎物性・特性
| 番号 | 用語 | 詳細・説明 | 英語(参考) |
|---|---|---|---|
| 1001 | 形状記憶効果 | 形状記憶効果とは,ある形状の合金を低温相(マルテンサイト)の状態で異なる形状に変形させても,高温で安定な相(オーステナイト)になる温度に加熱するとマルテンサイト逆変態が起こることで,変形前の形状に戻る現象 | shape memory effect |
| 1002 | 形状記憶合金 | 形状記憶合金とは,形状記憶効果を示す合金。 注記Ti-Ni合金,Ti-Ni-Cu合金,Cu-Zn-Al合金,Fe-Mn-Si合金などがある | shape memory alloys |
| 1003 | 磁性形状記憶合金 | 磁性形状記憶合金とは,形状記憶合金としての性質と磁性材料としての性質を併せもつ合金。 注記 Ni-Mn-Ga合金,Fe-Pd合金などの強磁性形状記憶合金では,マルテンサイトに磁場を負荷することで大きなひずみを発生することができる | magnetic shape memory alloys |
| 1004 | マルテンサイト変態 | マルテンサイト変態とは,固体間の相変態の一種で,高温で安定な相(オーステナイト)を冷却したとき,ある温度で,原子が拡散を伴わずにせん断変形的に連携移動して,異なる結晶構造の低温相(マルテンサイト)に変化する相変態。 注記マルテンサイト変態の特徴を,次に示す。 a) 無拡散変態である。 b) 表面起伏(形状変化)を伴う。 c) 母相とマルテンサイトの結晶格子との間に特定の格子対応と方位関係がある。 d) 晶へき面をもつ | martensitic transformation |
| 1005 | マルテンサイト | マルテンサイトとは,マルテンサイト変態によって生じる低温相の名称。 注記マルテンサイトは,母相からの冷却だけで生じるのではなく,母相状態で応力,静水圧又は磁場を加えることによっても生じることがある | martensite |
| 1006 | オーステナイト | オーステナイトとは,マルテンサイト変態に関与する相で,高温側で安定に存在する相。 注記母相又は高温相ともいう | austenite |
| 1007 | B2相 | B2相とは,Ti-Ni系形状記憶合金のオーステナイト相 | B2 phase |
| 1008 | B19’相 | B19’相とは,Ti-Ni系形状記憶合金で生成する単斜晶のマルテンサイト | B19’ phase |
| 1009 | B19相 | B19相とは,Ti-Ni-Cuなどで生成する斜方晶のマルテンサイト。 注記B19相へのマルテンサイト変態は,変態ひずみが約5 %ありながら温度ヒステリシスが小さいため,アクチュエータとしての応用に適している | B19 phase |
| 1010 | R相 | R相とは,Ti-Ni系形状記憶合金で,母相とB19’相との中間の温度域で生成する三方晶のマルテンサイト。 注記R相が出現するかどうかは組成又は内部組織によって異なり,相変態がB2→R→B19’の二段になる場合と,B2→B19’の一段になる場合とがある。 Ti-Ni合金では,転位などの加工組織又は析出物が存在するときにR相が生成しやすくなる。B2相からR相へのマルテンサイト変態は,B2相からB19’相へのマルテンサイト変態と比較して変態ひずみ,温度ヒステリシスと応力ヒステリシスが小さい | R phase |
| 1011 | R相変態 | R相変態とは,Ti-Ni系形状記憶合金でR相を生じるマルテンサイト変態 | R phase transformation |
| 1012 | 熱弾性形マルテンサイト変態 | 熱弾性形マルテンサイト変態とは,変態による化学自由エネルギーの変化と変態に伴う弾性ひずみエネルギーの変化とが,平衡を保ちながら起きるようなマルテンサイト変態。 注記この種の変態が起こる合金では,マルテンサイトとオーステナイトとの界面の整合性が良いため,その移動が容易に起こる。 そのためマルテンサイトは,温度の変化に対応して成長又は縮小し,変態の可逆性に優れ,温度ヒステリシスも小さい。形状記憶合金のマルテンサイト変態は,ほとんどの合金で熱弾性形である | thermo-elastic martensitic transformation |
| 1013 | 応力誘起マルテンサイト変態 | 応力誘起マルテンサイト変態とは,母相の安定な温度領域で,負荷応力によって誘起されるマルテンサイト変態 | stress-induced martensitic transformation |
| 1014 | 磁場誘起マルテンサイト変態 | 磁場誘起マルテンサイト変態とは,外部磁場によって誘起されるマルテンサイト変態 | magnetic field induced martensitic transformation |
| 1015 | 多段変態 | 多段変態とは,マルテンサイト相を冷却したり,応力,磁場などの外場を負荷することで異なった構造のマルテンサイト相へと変態すること | multistep transformation,successive transformation |
| 1016 | 擬弾性 | 擬弾性とは,原子間隔の変化に起因する弾性以外の機構で生じる,見かけの弾性の総称 | pseudoelasticity |
| 1017 | 超弾性 | 超弾性とは,負荷時に応力誘起マルテンサイト変態によって生じた変形が,除荷時の逆変態によって回復する性質。 注記このようなマルテンサイト変態に伴う超弾性を,変態擬弾性ともいう。 また,マルテンサイトの双晶界面の可逆的な運動によって生じるものは,双晶擬弾性といって区別する。 超弾性,双晶擬弾性では,弾性ひずみの数倍~数十倍のひずみが除荷時に回復する | superelasticity |
| 1018 | 逆変態 | 逆変態とは,冷却又は負荷に伴って生じた相変態が,加熱又は除荷に伴って母相に逆戻りする変態。 注記加熱の場合には,マルテンサイトからオーステナイトへ,R相からオーステナイトへ,又はマルテンサイトからR相への変態がある。 応力誘起マルテンサイト変態の場合には,マルテンサイトから構造の異なるマルテンサイトへの逆変態もある | reverse transformation |
| 1019 | 変態温度 | 変態温度とは,相変態が起こる温度。 注記マルテンサイト変態の場合には,次のような記号が用いられる。 Ms:冷却時に,オーステナイトからマルテンサイトへの変態が開始する温度。Mp:冷却時の,オーステナイトからマルテンサイトへの変態の発熱ピーク温度。 Mf:冷却時に,オーステナイトからマルテンサイトへの変態が終了する温度。 As:加熱時に,マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態が開始する温度。 Ap:加熱時の,マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態の吸熱ピーク温度。 Af:加熱時に,マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態が終了する温度。 R相変態の場合にも上記に準じた記号を用いることがある。 なお,これらの記号の後に温度又は点を付けて表示する場合もある(例えば,Af温度,Af点など)。 ![]() 図1-DSC(示差走査熱量測定)曲線におけるマルテンサイト変態温度と逆変態温度の求め方 | transformation temperature |
| 1020 | 生体適合性 | 生体適合性とは,細胞,血液,結合組織などの生きた生体組織に直接的に接触して利用され,長期間にわたって生体に悪影響も強い刺激も与えず,本来の機能を果たしながら生体と共存できる性質(JIS K 3600参照) | biocompatibility |
b) 形状記憶特性・超弾性特性
| 番号 | 用語 | 詳細・説明 | 英語(参考) |
|---|---|---|---|
| 2001 | 形状回復力 | 形状回復力とは,形状記憶効果によって,形状が元へ戻るときに発生する力。 注記発生力ともいう | shape recovery force |
| 2002 | 形状回復ひずみ | 形状回復ひずみとは,形状記憶効果によって,回復可能なひずみ。 注記形状回復量ともいう | shape recovery strain |
| 2003 | 形状回復温度 | 形状回復温度とは,形状記憶効果によって,形状回復が終了する温度。 注記逆変態が終了する温度Afで代用する場合がある | shape recovery temperature |
| 2004 | 一方向形状記憶効果 | 一方向形状記憶効果とは,高温相における形状だけを記憶しており,加熱時には形状回復するが,冷却時には形状変化しない形状記憶効果。 注記不可逆形状記憶効果ともいう | one-way shape memory effect,irreversible shape memory effect |
| 2005 | 二方向形状記憶効果 | 二方向形状記憶効果とは,高温相と低温相との両方の形状を記憶しており,外部応力を加えなくても加熱時ばかりでなく冷却時にも形状変化する形状記憶効果。 注記可逆形状記憶効果ともいう。 また,拘束時効処理したNi過剰なTi-Ni合金に現れる二方向形状記憶効果を特に全方位形状記憶効果といい,トレーニング,拘束加熱又は強変形の二方向形状記憶処理で生じた二方向形状記憶効果よりも低温での形状回復力と形状回復量が大きい | two-way shape memory effect, reversible shape memory effect |
| 2006 | 温度ヒステリシス | 温度ヒステリシスとは,加熱時と冷却時における変態温度の差。 注記通常Af温度とMs温度との差を指す。 熱ヒステリシスともいう | thermal hysteresis |
| 2007 | 応力ヒステリシス | 応力ヒステリシスとは,応力誘起マルテンサイト変態において,負荷時にマルテンサイト変態を誘起するために必要な応力と,除荷時にマルテンサイトが母相に逆変態する応力との差 | stress hysteresis |
| 2008 | 形状記憶素子 | 形状記憶素子とは,形状記憶処理によって,一定の形状を記憶した形状記憶効果を機能とする素子 | shape memory element |
| 2009 | 超弾性素子 | 超弾性素子とは,超弾性処理によって,所定の形状への超弾性復元を機能とする素子 | superelastic element |
| 2010 | 形状記憶ばね | 形状記憶ばねとは,形状記憶合金で製造され,形状記憶効果を示すばね。 注記通常のばねが弾性によって形状回復するのに対して,このばねでは,温度変化によって形状回復する。 圧縮コイルばね,引張コイルばね,薄板ばね,皿ばねなどがあり,圧縮コイルばねでは,形状回復時に伸張し,引張コイルばねでは,形状回復時に収縮する | shape memory alloy spring |
| 2011 | 超弾性ばね | 超弾性ばねとは,形状記憶合金で製造され,超弾性による復元を示す特殊なばね。 注記 形状記憶ばねと異なり,直線,アーチなどの単純形状用途が多い | superelastic spring |
| 2012 | バイアス法 | バイアス法とは,形状記憶素子において,コイルばね,板ばねなどを用いて形状記憶素子の駆動部に外部応力を負荷して,二方向動作を繰り返し行わせる方法 | bias method |
| 2013 | バイアスばね | バイアスばねとは,バイアス法において,外部応力を負荷するために用いるばね | bias spring |
| 2014 | 残留伸び | 残留伸びとは,超弾性においては,応力を負荷して変形した後,除荷時に残留する伸び。形状記憶効果においては,マルテンサイト相状態で変形し,形状回復温度以上に加熱した後に残留する伸び。![]() 図2-超弾性における残留伸び 注記残留ひずみという場合もある。 ![]() 図3-形状記憶効果における残留伸び 注記破線は加熱による形状回復を示す。 | residual elongation |
c) 熱処理とその他の処理
| 番号 | 用語 | 詳細・説明 | 英語(参考) |
|---|---|---|---|
| 3001 | 溶体化処理 | 溶体化処理とは,合金を高温側の固溶体領域まで加熱して,その温度に適切な時間保持して焼き入れし,固溶体化する処理 | solution heat treatment |
| 3002 | 均質化処理 | 均質化処理とは,Ti-Ni系形状記憶合金などの規則合金を規則化温度以下の高温で保持することで,組成むらと加工組織のない単相状態とする処理 | homogenization treatment |
| 3003 | 時効処理 | 時効処理とは,焼入れ又は加工によって生じた欠陥を除去したり,析出物を生じさせる目的で行われる熱処理の総称。 注記Ti-Ni合金では析出を促進し,銅系合金では母相を安定化させるために行う | aging treatment |
| 3004 | 形状記憶処理 | 形状記憶処理とは,形状を記憶させるために所定の形状に拘束して,オーステナイト状態の一定温度に加熱する処理。 注記一方向形状記憶処理ともいう | shape memory treatment |
| 3005 | 二方向形状記憶処理 | 二方向形状記憶処理とは,二方向形状記憶効果を付与するために,オーステナイトに内部応力場を導入するための処理。注記 トレーニング,強変形,拘束時効処理などがある | two-way shape memory treatment |
| 3006 | トレーニング | トレーニングとは,形状記憶効果,二方向形状記憶効果を発現させ,又は特性を改善するために,応力と温度との両方の効果を与えてマルテンサイト変態と逆変態とを繰り返す操作。 注記次のような操作がよく知られている。 1) 応力下又はひずみ下で,Mf点以下の温度とAf点以上の温度との間で冷却・加熱の操作を繰り返す。 2) Ms点又はMf点以下の温度に冷却して変形し,次いで外力を除いてAf点以上の温度に加熱するという操作を繰り返す(形状記憶効果トレーニング)。 3) Af点以上の温度で応力誘起マルテンサイト変態を起こさせ,次いで荷重を除くという操作を繰り返す(応力誘起トレーニング) | training |
| 3007 | 拘束時効処理 | 拘束時効処理とは,変形した形状に拘束したままで時効処理すること。 注記主にTi-Ni合金でB2相中に微細な析出物を析出させ,二方向形状記憶効果を導き出すための方法の一つとなっている | constrained aging treatment |
| 3008 | 超弾性処理 | 超弾性処理とは,所定の形状への超弾性復元性を付与するために行う熱処理。注記 熱処理温度は,形状記憶処理に比べ低く,ランニング炉での短時間処理の場合もある | superelastic treatment |
形状記憶合金用語関連 主なJIS規格 一覧
| 規格番号 | 規格名称 | 規格番号 | 規格名称 |
|---|---|---|---|
| JIS H 7001 | 形状記憶合金用語 | JIS H 7105 | Ti-Ni形状記憶合金コイルばねの定ひずみ試験方法 |
| JIS H 7101 | 形状記憶合金の変態点測定方法 | JIS H 7106 | 形状記憶合金コイルばねの定ひずみ熱サイクル試験方法 |
| JIS H 7103 | Ti-Ni形状記憶合金の引張試験方法 | JIS H 7107 | Ti-Ni形状記憶合金線,条と管 |

