JIS Q 14971-1 医療用具 リスクマネジメント 第1部 リスク分析の適用|最新 JIS規格 一覧|改正 更新情報|制定

JIS Q 14971-1 医療用具 リスクマネジメント 第1部 リスク分析の適用の規格 JIS Q 14971-1の基本・名称・用語・知識・JIS最新改正更新情報に関して解説!医療用具 リスクマネジメント 第1部 リスク分析の適用とは,

リスクマネジメントとは,リスクを組織的に管理(マネジメント)し,損失等の分析,回避又は低減を図る一連のプロセスをいい,企業の価値を維持・増大していくために,企業が経営を行う上で障壁となるリスクとそのリスクが及ぼす影響を正確にリスクを特定・把握し,事前にリスクレベルに応じて対策を講じることで危機発生を回避するとともに,危機発生時の損失を最小限にするための経営管理手法をいう。

JISQ14971-1:2001の規格は,医療用具に関連するハザードの特定及びリスクの推定によって,インビトロ診断用具又は附属品を含む医療用具の安全性を,利用可能な情報を用いて,調査する手順を規定。

医療用具 リスクマネジメント 第1部 リスク分析の適用 規格 一覧表

JIS Q 14971-1

医療用具 リスクマネジメント 第1部 リスク分析の適用の一覧

最新 JIS Q14971-1 規格の詳細 更新日 情報

JIS Q 14971-1の最新の詳細や改正,更新日の情報!

JIS 改正 最新情報

JIS規格番号 JIS Q14971-1 JIS改正 最新・更新日
規格名称 医療用具-リスクマネジメント-第1部:リスク分析の適用
英語訳 Medical devices – Risk management – Part 1: Application of risk analysis
対応国際規格 ISO ISO 14971-1 : 1998 Medical devices-Risk management-Part 1 : Application of risk analysis (IDT)
主務大臣 経済産業, 厚生労働 制定 年月日 2001年02月25日
略語・記号 No JISQ14971-1:2001

JIS規格「日本工業規格」は、2019年7月1日の法改正により名称が「日本産業規格」に変わりました。

リスクの受容度を含めた安全性について判断を下すことは,医療用具の意図した用途への適格性を決めるために必須なことである。安全性の認知に影響を与える要因として,その社会の社会経済的と教育的背景,患者の現状と予想される状況と状態とが含まれる。そのような判断には,医療用具の意図した用途,性能,リスクと効用,と臨床上の処置にかかわるリスクと効用とが考慮されなければならない。

適用範囲 [1]

この規格は,医療用具に関連するハザードの特定とリスクの推定によって,インビトロ診断用具又は附属品を含む医療用具の安全性を,利用可能な情報を用いて,調査する手順を規定する。

この規格は,適切な規格がないか,あっても使用されていない分野において特に助力となる。この規格は,受容度の水準を規定するものではない。受容度の水準は,このような規格に規定できない種々の要因によって決定されるからである。

この規格は,リスクマネジメントの全容に関する指針を示すことを目的としたものではない。さらに,特定の医療用具を使用するための適応と禁忌事項の内容を評価することを意図するものでもない。

備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。

なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21に基づき,IDT(一致している),MOD(修正している),NEQ(同等でない)とする。

ISO 14971-1 : 1998 Medical devices-Risk management-Part 1 : Application of risk analysis (IDT)

ISO 14971:2007,Medical devices — Application of risk management to medical devices

定義 [2]

この規格で用いる主な用語の定義は,次による。

損傷 [2.1]

(harm) 健康に対する身体的傷害と/又は財産(所有物)に対する損害。 (ISO/IEC Guide 51)

参考 損傷は,死亡などの傷害も含める。

ハザード [2.2]

(hazard) 損傷を発生する潜在的な源。 (ISO/IEC Guide 51)

リスク [2.3]

(risk) 損傷をもたらすハザードの予想される発生確率と損傷の程度。 (ISO/IEC Guide 51)

リスク分析 [2.4]

(risk analysis) ハザードを特定し,リスクを推定するための,利用可能な情報の調査。

備考1. 附属書Eを参照する。

2. 情報源の事例は,3.4の備考3.に示す。

安全性 [2.5]

(safety) 損傷に対する受容できないリスクがないこと。 (ISO/IEC Guide 51)

手順 [3]

一般 [3.1]

製造業者は,図1の流れ図と3.2~3.9に規定するリスク分析の手順によらなければならない。また,そのリスク分析の手順の実施と結果を文書化し,維持しなければならない。

備考1. リスク分析は,品質システムの一部として実行することができる。

2. リスク分析の手順の実施と結果の文書化は,最小限として次を包含することが望ましい。

  • a) 対象とする医療用具又は附属品に関する完全な記述と識別
  • b) 3.3で特定した可能性のあるハザードの一覧表
  • c) 受容できる水準までリスクを低減させた方法
  • d) リスク分析を実施した当事者の明確化

医療用具に関する質的と量的な特質の明確化 [3.2]

対象とする特定の医療用具又は附属品に対して,安全性に影響を与えるすべての特質を列挙することが望ましい。該当する場合には,その特質の限度を列挙することが望ましい。

備考1. インビトロ診断用具のリスク分析手法に関する追加指針を,附属書Aに示す。

2. 毒物学的ハザードのリスク分析手法に関する追加指針を,附属書Bに示す。

次の質問事項は,特質の列挙を行ううえで有効な指針となる。

  • a) 医療用具の意図する用途は何か,それはどのように使われるか?

考慮することが望ましい要因には,意図した使用者は誰か,使用者として必要な技術と訓練,人間工学的観点,使用される環境,据付けは誰がするか,患者がその医療用具の使用に関して制御できるか又は影響を与えるかなどがある。身体障害者,老人と子供の特別な要求がある使用者に対しては,特別な配慮をすることが望ましい。これらの要求として,医療用具の使用を可能にするために他の人による助力が必要かもしれない。

  • b) 医療用具は,患者又はその他の人に接触することを意図しているか?

考慮することが望ましい要因には,意図した接触,体表面接触,侵襲的接触と埋込み並びにそれぞれについて接触の期間と頻度などがある。

  • c) どのような材料と/又は部品を使用しているか?

考慮することが望ましい要因は,安全性に関連する特質が分かっているかどうかである。

  • d) 患者にエネルギーを与えと/又は患者からエネルギーを取り出すか?

考慮することが望ましい要因には,伝達されるエネルギーの種類,その制御,質,量,時間係数などがある。

リスク分析手順の流れ図

図1 リスク分析手順の流れ図

  • e) 患者に投与したり,と/又は患者から採取する物質はあるか?

考慮することが望ましい要因には,その物質は投与されるか又は採取されるか,その物質は単一の物質又は一連の物質群か,最大・最小投与・採取速度とその制御方法などがある。

  • f) その医療用具は,生体物質を処理して再利用するためのものか?

考慮することが望ましい要因には,処理のプロセス,処理される物質の種類などがある(例えば,自動輸液装置と透析装置)。

  • g) 医療用具は,滅菌されて供給されるのか,若しくは未滅菌で供給され使用者が滅菌することを意図するか,又は他の微生物制御法が適用できるか?

考慮することが望ましい要因には,医療用具は,使い捨てを意図するか,再利用を意図するか,滅菌包装形態,使用期限,再利用回数の制限,用いるべき滅菌方式などがある。

  • h) 医療用具は,患者の環境を変更することを意図しているか?

考慮することが望ましい要因には,温度,湿度,雰囲気ガスの組成と圧力などがある。

  • i) 測定をするか?

考慮することが望ましい要因には,測定するパラメータ,測定確度,測定精度などがある。

  • j) 医療用具は,解釈機能をもっているか?

考慮することが望ましい要因には,入力したデータ又は収集したデータから医療用具が結果を表示するかどうか,そして使われるアルゴリズム,信頼の限界などがある。

  • k) 医療用具は,その他の医療用具若しくは薬剤を制御することを意図するか,又はそれらと相互に作用することを意図するか?

考慮することが望ましい要因には,関与する他の医療用具又は薬剤の特定,その相互作用に関連して引き起こされる潜在的な問題などがある。

  • l) 好ましくないエネルギー又は物質を排出するか?

エネルギーに関連して考慮することが望ましい要因には,騒音と振動,熱,放射線(電離,非電離と紫外線,可視光線,赤外線の放射),接触温度,漏れ電流,電磁場などがある。

物質に関連して考慮することが望ましい要因には,化学的排出物,廃棄物,体液などがある。

  • m) 医療用具は,環境的影響を受けやすいか?

考慮することが望ましい要因には,こぼれ並びに電力と冷却の供給を含めて使用・輸送・保管の環境などがある。

  • n) 医療用具に関連する必すの消耗品と附属品が存在するか?

考慮することが望ましい要因には,消耗品と附属品についての仕様書,使用者がそれらを選ぶ際の制限条件などがある。

  • o) 保守と/又は校正を必要とするか?

考慮することが望ましい要因には,保守と/又は校正は,操作者若しくは使用者又は専門家によって実施されるべきかどうかなどがある。

  • p) 医療用具は,ソフトウェアを含んでいるか?

考慮することが望ましい要因には,ソフトウェアが使用者と/又は操作者によってインストール,修正又は交換されることを意図するかどうかなどがある。

  • q) 医療用具には,使用期限に関する制約があるか?

考慮することが望ましい要因には,ラベリング又は標識,該当医療用具の処分などがある。

参考 ラベリングの定義は,JIS Q 13485を参照する。

  • r) 使用が遅れた場合と/又は長期間使用した場合の影響はどうか?

考慮することが望ましい要因には,人間工学的影響と蓄積効果などがある。

  • s) 医療用具は,どのような機械的力を受けるか?

考慮することが望ましい要因には,医療用具が受ける力は使用者によって制御されるか,又は使用者以外の人とのやりとりによって制御されるものであるかなどがある。

  • t) 何が医療用具の寿命を決めるか?

考慮することが望ましい要因には,老朽化,電池の消耗などがある。

  • u) 医療用具は,使い捨てを意図するか又は再利用を意図するか?

可能性のあるハザードの特定 [3.3]

附属書Cとインビトロ診断用具についての附属書A.2に記載されている可能性のあるハザードの例を用いて,正常状態と故障状態の両方における医療用具に関連する潜在的なハザードの一覧表を作成する。

各ハザードに対するリスクの推定 [3.4]

3.3に基づき特定された可能性のあるハザードのそれぞれについて,入手できる情報/データを用いて正常状態と故障状態の両方におけるリスクを推定する。分析中のリスクレベルについての尺度を設定するために,リスク推定では特定されたハザードのきっかけとなる事象又は環境,関連する事象のつながり,緩和特性,と起こる可能性がある有害な結果の性質と頻度とを調査することが望ましい。

備考1. リスクを分析するために,リスクの要素(すなわち,重大性と確率)は,個別に分析されることが望ましい。定量的又は定性的な手法が適宜用いられてよい。これは,次の質問に対する回答を含む。

  • 医療用具の故障がなくても,ハザードは存在するか?
  • 医療用具の故障状態において,ハザードは存在するか?
  • 多重故障状態の場合に限って,ハザードは存在するか?

附属書Dとインビトロ診断用具についての附属書A.3には,幾つかの使用可能なリスク分析の手法についての情報を記載している。

備考2. リスク分析のために使用できる手法には,FMEA(故障モード影響解析),FTA(故障の木解析)とHAZOPがある。その手法の必要性,選択と使用は,医療用具の性質に基づいて行われるが,この規格の範囲外である。

附属書Dは,使用できる手法の幾つかについて簡単な要約を示している。この概念におけるそれ以上の詳細については,IEC 60300-3-9を参照する。参考文献については,附属書Fを参照する。

備考3. 情報/データは,例えば,次によって得ることができる。

  • 関連する規格
  • 科学的データ
  • 公表された事故報告を含む既に使用中の類似の医療用具による市場データ
  • 臨床的な証拠
  • 適切な調査結果

リスクの審査 [3.5]

与えられたハザードに対するリスクが,関連規格に適合することによって適切性が示され,又は受容性がその他の手段によって実証されている場合には,3.8に進む。3.4によって推定されたハザードに対するリスクが関連規格の適用又は他の方法によって定義された受容性の限界の水準を超えている場合には,3.6に進む。

医療用具が故障した状態でだけリスクが受容性の限界を超えていると判断される場合には,故障の発生の可能性を分析することが望ましい。この分析を行う場合には,次の問題を配慮することが望ましい。

  • 故障は,ハザードの発生以前に使用者によって検知することが可能か?
  • 故障は,製造上の更に効果的な管理又は予防的保守によって除去することができるか?
  • 誤った使い方によって故障発生の可能性は増すか?
  • 警報装置を付けることはできるか?

リスクの低減 [3.6]

リスクが適切に低減される場合は,3.7に進む。リスクが適切に低減されない場合には,リスク分析手順の流れから出る。

リスクは,次のような適切な手法によって,受容レベルにまで軽減することができる。

  • a) 直接的な安全手段(設計)。
  • b) 間接的な安全対策(保護手段)。保護手段の例としては,
  • 近づきやすさを制限する。例えば,放射線傷害に対して
  • ハザードから遮へいする。例えば,保護カバーの手段によって
  • c) 記述的安全手段。例えば,医療用具の使用期間又は頻度の制限,並びに用途,寿命又は環境の制限。
  • d) 用途の再明確化。

その他のハザードの発生 [3.7]

リスク低減の方法が,新しいハザードをもたらしたかどうかを判定する。

すべての特定されたハザードの評価 [3.8]

すべての特定されたハザードに対しリスクの評価が終わった場合には,3.9に進む。評価が終わっていない場合には,3.4に戻る。

備考 第三者の検証がされていない場合には,IEC 60300-3-9の5.5に示した分析検証をしてもよい。

リスク分析の報告 [3.9]

特定されたハザードに付随する残ったリスクが受容できるかどうかを判断するために,3.1によったリスク分析の結果を文書で残す。その際,医療用具の意図した用途と使用に関して考慮する。

リスク分析の見直し [4]

新しい情報とデータに照らしてリスク分析の見直しが考慮されることが望ましい。

備考 時間の経過とともにリスクが変わるならば,リスク分析の見直しが必要になるかもしれない。急速に変化する技術は,すでに特定されたハザードに対するリスクを除去したり,増加又は減少する可能性がある。

新たなリスクが,この見直しによって生じたり又は特定される可能性がある。

附属書A(参考)

インビトロ診断用具に関するリスク分析手順の指針

序文 この附属書(参考)は,インビトロ診断用具に関するリスク分析手順の指針について記述するものであり,規定の一部ではない。

一般 [A.1]

この附属書は,インビトロ診断用具のリスク分析について,追加的指針を与える。規定の際に当該医療用具の特殊性と固有の状況とを考慮した。インビトロ診断用具の使用は,患者又は検査対象者に対して,いかなる直接的リスクも引き起こさない。これらの医療用具は人体の内部に入れたり,人体の表面に接触させたりしないからである。ただし,ある種の状況の下で,医療用具に関連するハザードから間接的リスクが生じた結果,誤った決定を導いたり,又はそれをもたらすかもしれない。それに加えて,使用者に関連するハザードとそのハザードに付随するリスクが考慮されることが望ましい。

ハザードの特定 [A.2]

次の状況は,附属書Cに記述した観点に追加して,患者又は検査対象者に対する潜在的なハザードを,それぞれ特定することが望ましい。

  • バッチの不均等性,バッチ間の不一致性
  • 一般的干渉要因
  • キャリオーバ効果(持越されたものからの影響)
  • 試料の識別間違い
  • 安定性の問題(保管中,輸送中,使用時と容器の最初の開こん後)
  • 試料の採取,準備と安定性に関する問題
  • 必要条件の不十分な仕様

使用者に対する潜在的なハザードは,試薬が放射性,感染性,有毒性,又はその他の危険な成分をもっていることと包装の設計からもたらされる。器械に対しては,どの器械にも不特定の医療用具に関連するハザード(例えば,エネルギーによるハザード)に加えて,特に運搬操作と保守の期間中における潜在的な汚染の問題を考慮することが望ましい。

リスクの推定 [A.3]

各ハザードに対するリスクの推定において,次の状況を判断の中に取り入れることが望ましい。

  • 分析結果における信頼の限度(医学的判断に対する寄与度)
  • もっともらしさの確認
  • 対照の適用性と使用
  • 検査室において適用される品質保証手段,技術
  • 欠陥,誤りの発見のしやすさ
  • 使用の状態(例えば,救急用)
  • 専門家による使用,非専門家による使用

附属書B(参考)

毒性学的なハザードに関するリスク分析手順の指針

序文 この附属書(参考)は,毒性学的なハザードに関するリスク分析手順の指針について記述するものであり,規定の一部ではない。

一般 [B.1]

この附属書は,毒性学的なハザードの観点からリスク分析手順の指針を与える。毒性学的なハザードは,生物学的損傷をもたらす化学的な成分によるものである。ISO 10993-1は,材料と医療用具の生物学的な評価に対する一般的原理を述べている。

不必要な動物実験を避ける努力をすることが望ましい。動物愛護の要求事項についてのISO 10993-2と関連する国の法律,例えば,動物保護についてのEC指令 (86/609/EEC) に留意する。

もし,その試験の省略が科学的に正当化できるならば,省略してもよい。

毒性学的リスクの推定 [B.2]

■一般 [B.2.1]

毒性学的リスク分析は,次の点を考慮することが望ましい。

  • 材料の化学的性質
  • 材料の使用前歴
  • 生物学的安全性試験データ

データの量と評価の深さは,意図する用途によって変化し,患者との接触の状態と期間とに左右される。包装材料と損なわれていない皮膚に接する医療用具並びに身体組織,注入液,粘膜又は負傷した皮膚と直接接触しない医療用具の構成品に対するデータの要求は,通常それほど厳しくない。

追加的データが必要か否かを決定するために,科学的文献から得られる材料と医療用具の現在の知識,過去の臨床経験,その他関連するデータを検討することが望ましい。ある場合には,成分データ,残留物のデータ(例えば,滅菌プロセス,モノマー),生物学的試験データなどを得ることが必要になることがある。

■材料の化学的性質 [B.2.2]

材料の化学的特性と生物学的反応の特質を明確にした情報は,その意図した用途のために医療用具の評価に有用である。材料の生物学的適合性に影響を与える因子には,次の事項がある。

  • すべての成分(例えば,添加物,処理助材,モノマー,触媒と反応生成物)の識別,濃度,生体移行性と毒性
  • 材料に対する生体内分解性と腐食の影響

反応性又は有害性のある成分の使用又は生成が,材料の製造,処理,保管又は分解において起こる場合には,それらの残留物に対する生体暴露の可能性を考慮することが望ましい。残留物の濃度と/又は溶出に関する情報を得ることが必要である。これは,実験的データ又は当該材料の化学に関する情報によって形成される。完全な成分組成が秘密性のために製造業者が利用できない場合には,提案された用途に使用するための材料の適切性が評価されていることを検証することが望ましい。

■使用前歴 [B.2.3]

各材料又は意図的に添加されたものの使用前歴と経験した有害な作用に関して利用できる情報は調べることが望ましい。しかし,ある成分又は材料が以前に使われたからといって類似の用途に使われる場合に,適切性を保証できるとは限らない。意図される用途・成分の濃度・最新の毒性学的情報を考慮することが望ましい。

■生物学的安全性試験データ [B.2.4]

ISO 10993-1:2018は,どの試験をどの用途に適用するかの指針である。試験の必要性は,存在するデータに照らしてケースバイケースで検討することが望ましい。その結果として,不必要な試験は,省略することができる。

附属書C(参考)

医療用具に関連して起こる可能性があるハザードと関連する要因の例

序文 この附属書(参考)は,医療用具に関連して起こる可能性があるハザードと関連する要因の例について記述するものであり,規定の一部ではない。

一般 [C.1]

C.2~C.6に,種々の医療用具に関連して起こる可能性があるハザードと関連する要因に関してのリストを示す。ただし,すべてを網羅しているわけではない。リストは,リスク分析手順の3.3において起こる可能性があるハザードの明確化への手助けを目的とする【図1の3.3参照】。

エネルギーのハザード [C.2]

  • 電気
  • 機械的な力
  • 電離放射線
  • 非電離放射線
  • 電磁場
  • 可動部分
  • 懸垂物体
  • 患者を支える装置の故障
  • 圧力(容器の破裂)
  • 音圧
  • 振動
  • 磁場(例えば,MRI)

生物学的なハザード [C.3]

  • 生物的汚染
  • 生物不適合性
  • 不正確な産出物(物質/エネルギー)
  • 間違った成分組成(化学組成)
  • 毒性
  • アレルギー性
  • 変異原性
  • 催奇形性
  • 発がん性
  • (交差)感染
  • 発熱性
  • 衛生上の安全を維持できない
  • 退化

環境的なハザード [C.4]

  • 電磁干渉
  • 電力又は冷却材の不適切な供給
  • 冷却の制限
  • 規定された環境条件を外れて操作する可能性
  • その他の機器との不適合性
  • 偶発的な機械的損害
  • 廃棄物と/又は医療用具の廃棄による汚染

医療用具の使用に関連するハザード [C.5]

  • 不適切なラベリング
  • 不適切な取扱説明書
  • 不適切な附属品の仕様書
  • 不適切な使用事前点検の仕様書
  • 複雑すぎる取扱説明書
  • 使いにくい,まとまりのない取扱説明書
  • 未熟練な要員による使用と未訓練者による使用
  • 合理的に予見できる誤使用
  • 副作用に関する不十分な警告
  • 使い捨て医療用具の再使用しがちなハザードに関する不適切な警告
  • 不正確な計測とその他の計量状態
  • 不正確な診断
  • 間違ったデータ転送
  • 結果の誤表示
  • 消耗品,附属品,その他の機器との不適合性

機能的故障,保守と老朽化によってもたらされるハザード [C.6]

  • 意図した用途に対して性能特性が不適切
  • 保守後の機能点検を含めた保守仕様の欠如又は不適切さ
  • 不適切な保守
  • 医療用具の寿命が適切に決められていない
  • 機械的完全性(気密性,剛性など)の喪失
  • 不適切なこん(梱)包(医療用具の汚染と/又は劣化)
  • 不適切な再使用

附属書D(参考)

リスク分析手法に関する情報

序文 この附属書(参考)は,リスク分析手法に関する情報について記述するものであり,規定の一部ではない。

一般 [D.1]

この附属書は,3.4のリスク分析に利用できる手法についての指針を与える。これらの手法は補足的なもので,一つ以上を使用する必要があるかもしれない。想定された事象の結果を一つ一つ分析するということが基本原理である。

FMEA(故障モード影響解析) [D.2]

FMEAは,本来定性的な手法であり,これによって個々の構成要素の故障モードの結果を体系的に特定し評価する。これは「もし……ならば,出力はどうなるだろうか?」という問いを用いた帰納的手法である。構成要素は,一度に一つずつ分析され,一般的に単一故障状態まで検討される。これは,「ボトムアップ」方式で行われる。つまり,プロセスを進めることで一段ずつ高い機能システムレベルに上がっていく。

結果の重大性の程度の調査,それぞれの影響の発生確率とその検出可能性を統合することでFMEAは拡大され,これによって,いわゆる故障モード影響重大度解析 (FMCEA) となる。このような分析を行うには,医療用具の構造をある程度詳細に知らなければならない。

FMEAは,ヒューマンエラーを取り扱うのにも有用な手法である。また,ハザードを特定するためにも使用できるので,FTAへの入力を与える。

この手法の弱点は,冗長性の取扱いが困難なこと,修理又は予防的保守活動の取込みが困難なことと単一故障状態に限定されることである。

FTA(故障の木解析) [D.3]

FTAは,主として,他の諸手法で特定されたハザードを分析する手段であり,想定された好ましくない結果(トップイベントとも呼ばれる。)から出発する。トップイベントから始まる演えき的手法によって,可能性のある原因,又は好ましくない結果を引き起こす一段ずつ低い機能システムレベルでの故障モードが特定される。好ましくないシステム動作を段階的に順次低いシステムレベルまで特定することによって,コンポーネント故障モードと通常呼ばれる目的とするシステムレベルに導かれる。これによって想定された結果に導くことができる適切なシーケンスが明らかとなる。

FTAは,法廷弁論の目的には有益であることが立証されている。結果は,図式的に事象の木の形で表現される。木の中で特定された故障は,ハードウェアの故障とソフトウェアの間違い,ヒューマンエラー又は好ましくない事象に導かれるその他の関連事象である。FTAの有利な点は,単一故障状態には限定されないことである。

FTAは,体系的アプローチを可能とし,同時に十分に柔軟性があるので人的相互作用を含む様々な要因の分析ができる。FTAは,主としてリスク分析において,故障の確率を推定するためのツールとして用いられる。図式的表現は,システムの動作と関連する要因を容易に理解できるが,木が大きくなるとともにその処理は高度な数学的方法の使用が必要になるかもしれない。このような特徴が,故障の木の検証を困難にしている。

HAZOP [D.4]

(Hazard and operability study) HAZOPは,FMEAの一つの形式であると考えることができる。

HAZOPは,ハザードと動作性の諸問題を特定するための体系的手法であり,当初,化学プロセス産業で使うために開発された。HAZOPの原理は,プロセス・プラントの運用状態又は設計の各種段階に適用できる。設計の初期段階で実施されるHAZOPは,更に安全な詳細設計の指針を提供できる場合が多い。

当該手法の目的は,次による。

  • a) プラントとその意図する設計状態を含むプロセスの全体的な記述の作成
  • b) 正常な動作状態とその意図する設計からの逸脱がどのようにして生じるかを突き止めるためにプロセスのあらゆる部分の体系的な審査
  • c) そのような逸脱がプロセスとその出力に対してどのような結果をもたらすかを特定し,これらの逸脱がハザード又は運用性の諸問題に導けるかどうかの決定

医療用具の特質が製造プロセス,又はその他の化学的プロセスに依存する場合には,HAZOPは,医療用具のリスク分析に特に有益であるという特徴がある。

附属書E(参考)

リスク分析と他のリスクマネジメント活動との簡素化された関係

序文 この附属書(参考)は,リスク分析と他のリスクマネジメント活動との簡素化された関係について記述するものであり,規定の一部ではない。

リスクマネジメント活動図

附属書F(参考)

参考文献

序文 この附属書(参考)は,参考文献について記述するものであり,規定の一部ではない。

  • [1] ISO 10993-1 : 1992 Biological evaluation of medical devices-Part 1 : Guidance on selection of tests.
  • [2] ISO 10993-2 : 1993 Biological evaluation of medical devices-Part 2 : Animal welfare requirements.
  • [3] ISO 10993-3 : 1993 Biological evaluation of medical devices-Part 3 : Tests for genotoxicity, carcinogenicity and reproductive toxicity.
  • [4] ISO/TEC Guide 51 : 1990 Guidelines for the inclusion of safety aspects in standards.
  • [5] IEC 60300-3-9 : 1995 Dependability management-Part 3 : Application guide-Section 9 : Risk analysis of technological systems.
  • [6] IEC/TR 60513 : 1994 Fundamental aspects of safety standards for medical electrical equipment.
  • [7] IEC 60601-1-4 : 1994 Medical electrical equipment-Part 1 : General requirements for safety, 4 : Collateral standard : Safety requirements for programmable electronic medical sysytems.
  • [8] IEC 60812 : 1985 Analysis techniques for system reliability-Procedures for failure mode and effects analysis (FMEA).
  • [9] IEC 61025 : 1990 Analysis techniques for system reliability-Procedures for fault tree analysis (FTA).
  • [10] 86/609/EEC European Community on Animal Protection.

リスクマネジメント 関連 主なJIS規格 一覧

【 表 1 】
規格番号 規格名称 規格番号 規格名称
JIS Q 0073リスクマネジメント-用語JIS Q 31010リスクマネジメント-リスクアセスメント技法
JIS Q 14971-1医療用具-リスクマネジメント-第1部:リスク分析の適用JIS T 0993-1医療機器の生物学的評価-第1部:リスクマネジメントプロセスにおける評価と試験
JIS Q 31000リスクマネジメント-指針JIS T 14971医療機器-リスクマネジメントの医療機器への適用

基本、事業継続・危機管理、情報セキュリティ、個人情報保護

品質マネジメント、用語・記号、評価方法、医用電気機器、医療診断装置

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