JIS Q 10002 品質マネジメント 顧客満足 組織における苦情対応のための指針 規格 一覧|JIS 最新|改正|更新情報

品質マネジメント 顧客満足 組織における苦情対応のための指針の規格の一覧表 JIS Q 10002 マネジメントシステムの基本・基礎知識・JIS最新改正更新情報に関して解説!
この規格は,組織内部における製品とサービスに関連する苦情対応プロセスについての指針。
対応 ISO 10002:2018
品質マネジメントシステムとは「品質に関して組織を指揮し,管理するためのマネジメントシステム」。略してQMS(Quality Management System)と呼ばれることがあり,国際貿易上の技術的障害とならないよう ISO/TC176によって開発されたQMSの規格であるISO 9001については,JIS 日本産業規格として発行しいる。

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品質マネジメント 顧客満足 組織における苦情対応のための指針 規格 一覧表

苦情対応

品質マネジメント 顧客満足 組織における苦情対応のための指針

最新 JIS Q10002 規格の詳細 更新日 情報

JIS Q 10002の最新の詳細や改正,更新日の情報!

JIS 改正 最新情報

JIS規格番号 JIS Q10002 JIS改正 最新・更新日 2019年09月20日
規格名称 品質マネジメント-顧客満足-組織における苦情対応のための指針
英語訳 Quality management-Customer satisfaction-Guidelines for complaints handling in organizations
対応国際規格 ISO ISO 9000:2015,Quality management systems-Fundamentals and vocabulary(IDT)
主務大臣 経済産業 制定 年月日 2005年06月20日
略語・記号 No JISQ10002:2019

JIS規格「日本工業規格」は、2019年7月1日の法改正により名称が「日本産業規格」に変わりました。

一般

この規格は,組織が,電子商取引を含む,あらゆる種類の商業活動又は非商業活動のための,効果的かつ効率的な苦情対応プロセスの計画,設計,開発,運用,維持と改善について,指針を提供するものである。この規格は,組織,顧客,苦情申出者とその他の密接に関連する利害関係者に資するよう意図されている。

苦情対応プロセスを通じて得られた情報は,製品,サービスとプロセスの改善につながり,適切に苦情対応した場合には,組織の規模,所在地と活動分野に関係なく,組織の評価が高まることになる。グローバル市場では,矛盾のない苦情対応を行うことによって信頼を与え,この規格を用いる価値がより明白になる。

効果的かつ効率的な苦情対応プロセスは,製品とサービスを提供する組織と製品とサービスを受け取る人々の双方のニーズと期待を反映する。

この規格で規定するプロセスを通じて苦情対応を行うことによって,顧客満足が高まる。顧客が満足しない場合の苦情を含め,顧客からのフィードバックを促進することが,顧客の信頼感と賛同を維持し又は高める機会並びに国内と国際競争力を改善する機会を提供できる。

この規格で規定するプロセスを実施することによって,次の事項が可能となる。

  • ● 公開された応答の良い苦情対応プロセスに苦情申出者がアクセスできる。
  • ● 苦情申出者と組織が満足できる,矛盾のない系統的で応答の良い方法で苦情を解決する組織の能力を高める。
  • ● 苦情の傾向を明確にし,その原因を除去し,組織の能力を高めるとともに組織の運営を改善する。
  • ● 顧客を重視した苦情解決の方法を組織が確立することと顧客とともに苦情解決に取り組む中で要員の技能向上を促進する。
  • ● 苦情対応プロセス,苦情の解決結果と実行されたプロセス改善に関する継続的なレビューと分析のための基礎を提供する。

組織は,顧客満足行動規範と外部紛争解決プロセスと関連付けて,苦情対応プロセスを使用することができる。

この規格は,公的組織又は私的組織から,製品・サービスを受け取る又はその可能性のある個人又は組織の満足に焦点を当てている。

JIS Q 9001とJIS Q 9004との関係

この規格は,JIS Q 9001とJIS Q 9004と両立し,苦情対応プロセスの効果的かつ効率的な適用を通じて,これら二つの規格の目標を支援する。この規格は,JIS Q 9001とJIS Q 9004から独立して用いることもできる。

JIS Q 9001は,品質マネジメントシステムの要求事項を規定している。この規格(JIS Q 10002)で規定する苦情対応についてのプロセスは,品質マネジメントシステムの一要素として用いることができる。

JIS Q 9004は,組織が持続的成功を達成するための手引を提供している。この規格(JIS Q 10002)の使用によって,持続的成功の達成を促進するために,苦情対応分野でのパフォーマンスを向上し,顧客とその他の密接に関連する利害関係者の満足を高めることができる。また,顧客とその他の密接に関連する利害関係者からのフィードバックに基づいた製品,サービスとプロセスの品質の継続的改善を促進できる。

注記 顧客と苦情申出者とは別に,その他の密接に関連する利害関係者には,供給者,業界団体とそのメンバー,消費者団体,関連行政機関,要員,所有者,並びに苦情対応プロセスの影響を受けるその他の者を含めることができる。

JIS Q 10001とJIS Q 10003との関係

この規格は,JIS Q 10001とJIS Q 10003と両立する。これら三つの規格は,それぞれを単独で用いることも,組み合わせて用いることもできる。JIS Q 10001,JIS Q 10003とこの規格を組み合わせて用いた場合,これらの規格は,行動規範,苦情対応と紛争解決を通じた顧客満足向上のための,より広範で統合された枠組みの一部になり得る 附属書A参照。

JIS Q 10001は,顧客満足に関連する,組織における行動規範のための手引を規定している。このような行動規範は,問題発生の可能性を減少させることができ,かつ,顧客満足を低める可能性のある苦情と紛争の原因を取り除くことができる。

JIS Q 10003は,組織内で十分に解決できない製品とサービス関連の苦情に関する紛争解決のための手引を規定する。JIS Q 10003は,苦情が解決されないことから生じる顧客の不満足を最小限に抑えることを助けることができる。

注記 対応国際規格には,ISO 10004に関する記載があるが,JISとしては不要であり削除した。

適用範囲 [1]

この規格は,組織内部における製品とサービスに関連する苦情対応プロセスについての指針を示す。この規格は,苦情対応プロセスの計画,設計,開発,運用,維持と改善を含む。規定する苦情対応プロセスは,品質マネジメントシステム全体のうちの一プロセスとして用いるのに適している。

注記1 この規格全体を通じて,「製品」と「サービス」という用語は,顧客向けに意図した又は顧客に要求された,組織のアウトプットを指す。

この規格は,業種・形態,規模,又は提供する製品とサービスを問わず,あらゆる組織が用いることを意図している。この規格は,全ての分野の組織が用いることも意図している。小規模事業者のための手引を,附属書Bに示す。

この規格は,苦情対応の次のような側面を扱っている。

  • a) フィードバック(苦情を含む。)を積極的に受け入れる顧客重視の風土を作り,受け取った様々な苦情を解決し,組織が,顧客サービスを含む,製品とサービスを改善する能力を高めることによって,顧客満足を高める。
  • b) 要員の教育・訓練を含む経営資源の十分な確保と活用についてのトップマネジメントの参画とコミットメント
  • c) 苦情申出者のニーズと期待を認識し,対応する。
  • d) 苦情申出者のために,開かれており,効果的で,かつ,利用しやすい苦情プロセスを設ける。
  • e) 顧客サービスを含む,製品とサービスの品質を改善するために,苦情を分析し,評価する。
  • f) 苦情対応プロセスの監査を行う。
  • g) 苦情対応プロセスの有効性と効率についてレビューを行う。

この規格は,組織外の紛争解決又は雇用関連の紛争には適用されない。

注記2 この規格の対応国際規格とその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 10002:2018,Quality management-Customer satisfaction-Guidelines for complaints handling

in organizations(IDT)

なお,対応の程度を表す記号「IDT」は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,「一致している」ことを示す。

引用規格 [2]

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用規格は,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)は適用しない。

JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本と用語

注記 対応国際規格:ISO 9000:2015,Quality management systems-Fundamentals and vocabulary(IDT)

用語と定義 [3]

この規格で用いる主な用語と定義は,JIS Q 9000:2015によるほか,次による。

注記 ある特定の文脈において特別の意味に限定されている概念は,その定義の前の<>内に主題の分野を示した。

ISOとIECは,次のURLにおいて,標準化に用いる用語データベースを維持する。

● ISO Online browsing platform: https://www.iso.org/obp

● IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/

苦情申出者(complainant)[3.1]

苦情(3.2)を申し出ている人,組織(3.8)又はそれらの代理人。

JIS Q 10001:2019の3.2参照

苦情(complaint)[3.2]

<顧客満足>製品若しくはサービス又は苦情対応プロセスに関して,組織(3.8)に対する不満足の表現であって,その対応又は解決を,明示的又は暗示的に期待しているもの。

注記1 苦情は,組織が顧客(3.3)と相互に作用する他のプロセスに関して申し立てることもできる。

注記2 苦情は,組織に直接的に又は間接的に申し立てることができる。

(JIS Q 9000:2015の3.9.3を変更。注記1と注記2を追加した。

顧客(customer)[3.3]

個人若しくは組織(3.8)向け又は個人若しくは組織から要求される製品・サービスを,受け取る又はその可能性のある個人又は組織。

例 消費者,依頼人,エンドユーザ,小売業者,内部プロセスからの製品又はサービスを受け取る人,受益者,購入者

注記 顧客は,組織の内部又は外部のいずれでもあり得る。

JIS Q 9000:2015の3.2.4参照

顧客満足(customer satisfaction)[3.4]

顧客(3.3)の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方。

注記1 製品又はサービスが引き渡されるまで,顧客の期待が,組織(3.8)に知られていない又は顧客本人も認識していないことがある。顧客の期待が明示されていない,暗黙のうちに了解されていない又は義務として要求されていない場合でも,これを満たすという高い顧客満足を達成することが必要なことがある。

注記2 苦情(3.2)は,顧客満足が低いことの一般的な指標であるが,苦情がないことが必ずしも顧客満足が高いことを意味するわけではない。

注記3 顧客要求事項が顧客と合意され,満たされている場合でも,それが必ずしも顧客満足が高いことを保証するものではない。

JIS Q 9000:2015の3.9.2参照

顧客サービス(customer service)[3.5]

製品又はサービスのライフサイクル全般にわたる,組織(3.8)の顧客(3.3)との相互関係。

JIS Q 9000:2015の3.9.4参照

フィードバック(feedback)[3.6]

<顧客満足>製品,サービス又は苦情対応プロセスへの意見,コメント,と関心の表現。

注記 フィードバックは,組織(3.8)が顧客(3.3)と相互に作用する他のプロセスに関して与えることもできる。

(JIS Q 9000:2015の3.9.1を変更。注記を追加した。

利害関係者(interested party),ステークホルダー(stakeholder)[3.7]

ある決定事項若しくは活動に影響を与え得るか,その影響を受け得るか,又はその影響を受けると認識している,個人又は組織(3.8)。

例 顧客(3.3),所有者,組織内の人々,提供者,銀行家,規制当局,組合,パートナ,社会(競争相手又は対立する圧力団体を含むこともある。)

(JIS Q 9000:2015の3.2.3を変更。注記は,削除した。

組織(organization)[3.8]

自らの目標を達成するため,責任,権限と相互関係を伴う独自の機能をもつ,個人又はグループ。

注記 組織という概念には,法人か否か,公的か私的かを問わず,自営業者,会社,法人,事務所,企業,当局,共同経営会社,協会,非営利団体若しくは機構,又はこれらの一部若しくは組合せが含まれる。ただし,これらに限定されるものではない。

(JIS Q 9000:2015の3.2.1を変更。注記2は,削除した。

基本原則 [4]

一般 [4.1]

効果的かつ効率的な苦情対応のために,4.2~4.15の基本原則を遵守することが望ましい。

コミットメント [4.2]

組織は,苦情対応プロセスを定め,実施することを,積極的にコミットメントすることが望ましい。

対応能力 [4.3]

苦情対応のために,十分な経営資源を準備し,配置するとともに,効果的かつ効率的にマネジメントすることが望ましい。

透明性 [4.4]

苦情対応プロセスは,顧客,要員とその他の密接に関連する利害関係者に伝達することが望ましい。個々の苦情申出者には,その申出者の苦情への対応に関する適切な情報を提供することが望ましい。

アクセスの容易性 [4.5]

苦情対応プロセスは,全ての苦情申出者が容易にアクセスできることが望ましい。苦情の申出と解決の詳細についての情報を入手できるようにすることが望ましい。苦情対応プロセスとサポート情報は分かりやすく,使いやすいことが望ましい。情報は,分かりやすい言葉にすることが望ましい。苦情申出に関する情報と支援は,どのような苦情申出者も不利益を被ることがないように,大きい文字の印刷物,点字印刷物,音声テープなどの代替形式を含め,製品とサービスの提供又は引渡しの時点において当該製品とサービスに添付する情報のために用いた言語又は書式で,提供することが望ましい 附属書C参照。

応答性 [4.6]

組織は,苦情対応に関する顧客のニーズと期待に取り組むことが望ましい。

客観性 [4.7]

苦情はそれぞれ,苦情対応プロセス全体を通じて,公平で,客観的かつ偏見のない態度で対応することが望ましい 附属書D参照。

料金 [4.8]

苦情対応プロセスへアクセスするときは,苦情申出者に対して,料金を請求しないことが望ましい。

情報の完全性 [4.9]

組織は,組織の苦情対応に関する情報が正確で,誤解を招くことがないこと,と収集したデータが関連していて,正しく,完全で,有意義かつ有用であることを確実にすることが望ましい。

機密保持 [4.10]

苦情申出者個人を特定できる情報は,組織内での苦情対応の目的に限り,必要なところで利用可能とすることが望ましい。また,顧客又は苦情申出者が,その公開について明確に同意している場合,又は法令によって開示が義務付けられている場合を除き,この情報を公開しないように,積極的に保護することが望ましい。

注記 個人を特定できる情報とは,ある個人との関係で,その人物を特定するために用いることができる情報であり,個人の氏名,住所,Eメールアドレス,電話番号又はこれに類する具体的識別情報によって検索可能な情報である。この用語の正確な定義は,国によって異なる。

顧客重視のアプローチ [4.11]

組織は,苦情対応に関する顧客重視のアプローチを適用し,フィードバックを積極的に受け入れることが望ましい。

説明責任 [4.12]

組織は,苦情対応に関する組織の決定と対応についての説明責任と報告体制を確立し,維持することが望ましい。

改善 [4.13]

苦情対応プロセスの有効性と効率の向上は,組織の永続的な目標であることが望ましい。

力量 [4.14]

組織の要員には,苦情に対応するために必要な個人的特質,技能,訓練,教育と経験が備わっていることが望ましい。

適時性 [4.15]

苦情は,苦情の性質と利用されるプロセスの性質を考慮して,できる限り迅速に対応することが望ましい。

苦情対応の枠組み [5]

組織の状況 [5.1]

苦情対応プロセスを計画し,設計し,開発し,運用し,維持し,改善する際に,組織は,次の事項によってその状況を考慮することが望ましい。

  • ● 組織の目的に関連し,かつ,苦情対応の目標を達成する組織の能力に影響を与える,外部と内部の課題を特定し,取り組む。
  • ● 苦情対応プロセスに関連する利害関係者を特定し,かつ,それらの利害関係者の密接に関連するニーズと期待に取り組む。
  • ● その領域と適用可能性を含め,組織の苦情対応プロセスの適用範囲を特定し,かつ,外部と内部の課題並びに先に示した利害関係者のニーズを考慮に入れる。

リーダーシップとコミットメント[5.2]

トップマネジメントは,効果的かつ効率的な苦情対応においてリーダーシップを実証し,組織は,その苦情対応に,積極的に取り組むことが望ましい。組織のトップマネジメントがそのコミットメントを示し,推進することが特に重要である。

苦情に対して対応するという強いリーダーシップとコミットメントによって,要員と顧客の双方が組織の製品,サービスとプロセスの改善に貢献できる。

このリーダーシップとコミットメントは,苦情解決の方針と手順の決定,適用と普及に反映することが望ましい。トップマネジメントは,教育・訓練を含む十分な経営資源を提供することで,リーダーシップとコミットメントを示すことが望ましい。

方針 [5.3]

トップマネジメントは,顧客重視の苦情対応方針を明確に設定することが望ましい。全ての要員がその方針を入手でき,知ることができるようにすることが望ましい。顧客とその他の密接に関連する利害関係者も,その方針を入手できるようにすることが望ましい。方針は,プロセスに含まれる各機能と要員

の役割についての手順と目標によって裏付けられていることが望ましい。

苦情対応プロセスの方針と目標を設定する場合には,次の要素を考慮に入れることが望ましい。

  • ● 適用されるあらゆる法令・規制要求事項の特定
  • ● 財務上,業務上と組織上の要求事項
  • ● 顧客,要員とその他の密接に関連する利害関係者からのインプット

品質方針と苦情対応に関する方針とは,整合することが望ましい。

責任と権限 [5.4]

[5.4.1]

トップマネジメントは,次の事項に責任をもつことが望ましい。

  • a) 苦情対応プロセスと目標が,組織内で設定されることを確実にする。
  • b) 苦情対応プロセスが,組織の苦情対応方針に従って,計画,設計,開発,運用,維持と継続的に改善されることを確実にする。
  • c) 効果的かつ効率的な苦情対応プロセスに必要な経営資源を特定し,配分する。
  • d) 苦情対応プロセスと顧客重視の重要性の認識を,組織全体にわたって高めることを確実にする。
  • e) 苦情対応プロセスに関する情報を,顧客,苦情申出者と該当する場合,直接関係する他の当事者に,容易に入手できる方法で伝達することを確実にする 附属書D参照。
  • f) 苦情対応のマネジメント責任者を任命し,5.4.2の責任と権限に加えて,その人の責任と権限を明確に定める。
  • g) 重大な苦情は,迅速かつ効果的にトップマネジメントに伝わるプロセスがあることを確実にする。
  • h) 苦情対応プロセスが,効果的かつ効率的に維持され,継続的に改善されることを確実にするために,これを定期的にレビューする。

[5.4.2]

苦情対応のマネジメント責任者は,次の事項に責任をもつことが望ましい。

  • a) パフォーマンスの監視,評価と報告のためのプロセスを確立する。
  • b) 苦情対応プロセスについて,改善提案を含めてトップマネジメントに対し報告を行う。
  • c) 適切な要員の採用と教育・訓練,技術的要求事項,文書,処理目標時間とその他の要求事項の設定と遵守,並びにプロセスのレビューを含む,苦情対応プロセスの効果的かつ効率的な運用を維持する。

[5.4.3]

苦情対応プロセスに関わるその他の管理者は,自らの責任範囲において,適宜,次の事項に責任をもつことが望ましい。

  • a) 苦情対応プロセスを実施することを確実にする。
  • b) 苦情対応のマネジメント責任者と連携する。
  • c) 苦情対応プロセスと顧客重視の重要性についての認識を高めることを確実にする。
  • d) 苦情対応プロセスの情報が容易に入手できるようにすることを確実にする。
  • e) 苦情対応に関する処置と決定について報告する。
  • f) 苦情対応プロセスが監視され,記録されることを確実にする。
  • g) 問題の是正,将来の再発防止のための処置をとり,その事実を記録することを確実にする。
  • h) 苦情対応データが,トップマネジメントレビューにおいて利用できることを確実にする。

[5.4.4]

顧客と苦情申出者と接する全ての要員は,次の事項を実施することが望ましい。

  • ● 苦情対応の教育・訓練を受ける。
  • ● 組織が定めた,苦情対応についての報告に関する要求事項に従う。
  • ● 丁寧に顧客に対応し,顧客の苦情に迅速に対処し,又は適切な担当者に振り向ける。
  • ● 良い対人関係と良いコミュニケーション技術を示す。

[5.4.5]

全ての要員は,次の事項を実施することが望ましい。

  • ● 苦情に関する自らの役割,責任と権限を認識する。
  • ● どのような手順に従うか,また,苦情申出者にどのような情報を伝えるかを認識する。
  • ● 組織に重大な影響を与える苦情について報告する。

計画,設計と開発 [6]

一般 [6.1]

組織は,顧客の信頼感と顧客満足を高めるため,また,提供する製品とサービスの品質を向上させるために,効果的かつ効率的な苦情対応プロセスを計画し,設計し,開発することが望ましい。このプロセスは,その機能に調和した相互に関連する一連の活動からなり,様々な要員,情報,材料,財務とインフラストラクチャに関連する経営資源を活用することによって,苦情対応方針への適合と目標の達成を目指すことが望ましい。組織は,苦情対応について,他の組織の最善事例を考慮に入れることが望ましい。組織は,苦情対応に関する,顧客とその他の密接に関連する利害関係者の期待と認識を理解することが望ましい。苦情対応プロセスを確立し,使用する際,組織は生じ得るリスクと機会を考慮し,取り組むことが望ましい。これには次の事項を含む。

  • ● リスクと機会に関するプロセス並びに外部と内部の課題を監視し,評価する。
  • ● 固有のリスクと機会を特定し,評価する。
  • ● 特定し,評価したリスクと機会に関する,是正処置と改善を計画し,設計し,開発し,実施し,レビューする。

JIS Q 9000:2015の3.7.9に規定するとおり,リスクとは,不確かさの影響で,好ましい影響又は好ましくない影響をもち得る。苦情対応の場合,好ましくない影響の例には,特定の時間内に受理した苦情の量又は複雑性に対応するための経営資源が不十分であることから生じる,顧客の不満足がある。また,好ましい影響の例には,組織が,顧客と接する要員に提供する教育・訓練をレビューした結果,苦情対応に関係する経営資源を再考することがある。これらのリスクには,経営資源の割当てと開発をレビューすることで取り組むことができ,追加要員,教育・訓練又は苦情対応プロセスへのアクセスの選択肢の提供につながる。

機会は,好ましい成果を実現する可能性のある新たな方法の特定に関連していて,必ずしも組織がもつリスクから生じるわけではない。例えば,組織は,苦情に対応する中で顧客からの提案を受けて,新しい製品,サービス又はプロセスを特定し得る。

目標 [6.2]

トップマネジメントは,苦情対応の目標が,組織内の関連する部門と階層で設定され,かつ,伝達されることを,確実にすることが望ましい。苦情対応の目標は,測定可能で,苦情対応の方針と整合していることが望ましい。これらの目標は,詳細なパフォーマンスの基準として,定期的に設定されることが望ましい。

活動 [6.3]

トップマネジメントは,苦情対応プロセスの計画,設計と開発が,顧客満足の維持と向上のために遂行されることを確実にすることが望ましい。苦情対応プロセスは,組織の品質マネジメントシステムのその他のプロセスと連携し,整合することができる。

注記 個々の苦情に対応する手順を表すフローチャートを,附属書Eに示す。

経営資源 [6.4]

苦情対応プロセスの効果的かつ効率的な運用を確実にするために,トップマネジメントは,必要な経営資源を評価し,それらを提供することが望ましい。これらの経営資源には,要員,教育・訓練,手順,文書,専門家によるサポート,材料と設備,コンピュータのハードウェアとソフトウェア,財源などが含まれる。

苦情対応プロセスに携わる要員の選定,支援と教育・訓練は,特に重要な要素である。

苦情対応プロセスの運用 [7]

コミュニケーション [7.1]

業務案内,パンフレット,電子媒体情報などの苦情対応プロセスに関する情報は,顧客,苦情申出者とその他の密接に関連する利害関係者が容易に入手できるようにすることが望ましい。いかなる苦情申出者も不利益を被ることがないように,このような情報は,分かりやすい言葉で表現し,合理的に誰でも容易に入手できる様式で提供されることが望ましい。情報の例には,次の事項がある。

  • ● どこで苦情の申出ができるのか。
  • ● どのように苦情を申し出るのか。
  • ● 苦情申出者によって提供される情報 附属書C参照
  • ● 苦情対応のプロセス
  • ● プロセスでの様々な段階における期限
  • ● 外部手段を含む解決策に関する苦情申出者の選択肢 7.9参照
  • ● 苦情申出者が,苦情対応の進捗状況についてのフィードバックをどのように入手できるか。

苦情の受理 [7.2]

最初に苦情が報告された時点で確認している情報と識別コードを記録することが望ましい。初期の苦情の記録から,苦情申出者が求めた解決策と効果的な苦情対応に必要な情報を特定できるようにすることが望ましい。その情報には,次の事項が含まれる。

  • ● 苦情とそれに関連した証拠となるデータの記述
  • ● 要求された解決策
  • ● 苦情となった製品とサービス又はそれに関連した組織の体質
  • ● 対応の期限
  • ● 苦情に関連する組織の人,部署,支社,組織と市場セグメント(segment)のデータ
  • ● 即時にとられた処置(もしあれば)

更に詳細な手引を附属書Cと附属書Fに示す。

苦情の追跡 [7.3]

最初に苦情を受理した時点から,苦情申出者が満足するか又は最終決定がなされる時点までのプロセス全体にわたって,苦情を追跡できるようにすることが望ましい。苦情申出者が要求した場合と定期的に,少なくとも事前に設定した締切り期限には,苦情対応の最新状況が入手できるようにすることが望ましい。苦情申出者には,丁寧な対応をし,苦情対応プロセスにおける苦情対応の進捗状況を,適時知らせることが望ましい。

苦情の受理通知 [7.4]

それぞれの苦情の受理は,直ちに苦情申出者に通知することが望ましい(例えば,郵便,電話又はEメールによって)。

苦情の初期評価 [7.5]

受理した後,それぞれの苦情は,例えば,重大性,安全性,複雑性,インパクト,即時処置の必要性と可能性などの基準で初期評価を行うことが望ましい。苦情は,その緊急度に応じて迅速に対処することが望ましい。例えば,重大な健康と安全問題は,直ちに対応することが望ましい。

苦情の調査 [7.6]

苦情をめぐる全ての状況と情報の調査のために,最善の合理的な努力をすることが望ましい。調査のレベルは,苦情の深刻さ,発生する頻度と重大性に比例することが望ましい。

苦情への対応 [7.7]

適切な調査に引き続いて,組織は,例えば,問題を是正し,将来発生を予防する対応をとることが望ましい 附属書G参照。苦情がすぐに解決できない場合は,できるだけ早く効果的な解決につながるような方法で,対応することが望ましい エスカレーションに関しては,附属書Hを参照。

決定事項の伝達 [7.8]

苦情対応に関する決定事項又はいずれの処置も,苦情申出者又は苦情に関わった要員に関係しているので,決定を下す又は処置を行うときには,迅速にそれらの関係者に伝達することが望ましい。

苦情対応の終了 [7.9]

苦情申出者が,提案された決定事項又は処置を受け入れた場合には,その決定事項又は処置を遂行し,記録することが望ましい。

苦情申出者が,提案された決定事項又は処置を拒否した場合には,その苦情は未解決の状態とすることが望ましい。この内容は記録し,苦情申出者には,別な形で活用可能な内部と外部の解決方法を知らせることが望ましい 附属書H参照。

組織は,合理的な内部と外部の解決方法の選択肢がなくなるまで,又は苦情申出者が満足するまで,苦情対応に関する進捗状況の監視を続けることが望ましい。

維持と改善 [8]

情報の収集 [8.1]

組織は,苦情対応プロセスのパフォーマンスを記録することが望ましい。組織は,苦情内容とその対応を記録し,これらの記録を利用と管理するための手順を確立し,実施することが望ましい。苦情申出者の個人情報の保護と機密保持を確実にすることが望ましい。収集した情報は,関連していて,正しく,完全で,有意義かつ有用であることが望ましい。

これには,次の事項がある。

  • a) 記録の識別,収集,分類,維持,保管と廃棄についての手順を規定する。
  • b) 苦情対応を記録し,これらの記録を維持する。電子ファイル,磁気記録媒体などの記録は,取扱いの誤り又は「機器の旧式化に伴う更新」(obsolescence)の結果,紛失することがあり得るので,その保存のために最大限の配慮を行う。
  • c) 苦情対応プロセスに関わる個々の要員が受けた教育・訓練と指導の種類に関する記録を残す。
  • d) 苦情申出者又はその代理人が,記録の提供と提出を求めた場合の組織対応基準を規定する。これには,提出期限,どのような情報を誰にどういう形式で提供するかを含み得る。
  • e) 個人を特定しない統計的な苦情データについて,どのような方法で,いつ公開するかを規定する。

苦情の分析と評価 [8.2]

苦情の根本的な原因を除去するために,また,提供するプロセス,製品とサービスにおける改善の機会又は変更を特定するために,システム的問題なのか,単発的問題なのか又は繰り返し発生する問題なのか,傾向を明確にし,全ての苦情を分類し,分析することが望ましい。

苦情対応プロセスに対する満足度の評価 [8.3]

苦情対応プロセスに対する苦情申出者の満足度のレベルを判断するために,定期的な処置をとることが望ましい。このためには,苦情申出者のランダム調査とその他の技法を用いることができる。

注記1 苦情対応プロセスに対する満足度を高める方法の一つは,苦情申出者に対する組織の対応について,シミュレートすることである。

注記2 対応国際規格には,ISO 10004に関する記載があるが,JISとしては不要であり削除した。

苦情対応プロセスの監視 [8.4]

苦情対応プロセス,要求された経営資源(要員を含む。),と収集するデータの継続的な監視を実施することが望ましい。

苦情対応プロセスのパフォーマンスは,あらかじめ定められた所定の基準を用いて測定することが望ましい 附属書I参照。

苦情対応プロセスの監査 [8.5]

組織は,苦情対応プロセスのパフォーマンスを評価するために,監査を定期的に実施することが望ましい。監査では,次の情報を提供することが望ましい。

  • ● プロセスの苦情対応手順への適合性
  • ● プロセスの苦情対応の目標を達成するための適切性と有効性

苦情対応の監査は,品質マネジメントシステム監査の一環として,例えば,JIS Q 19011に沿って実施することができる。監査の結果は,苦情対応プロセスの問題を特定し,改善を図るために,マネジメントレビューで考慮に入れることが望ましい。監査の対象となる活動から独立した監査の力量のある人が,監査を行うことが望ましい。附属書Jに,監査についてのより詳細な指針を示す。

苦情対応プロセスのマネジメントレビュー [8.6]

[8.6.1]

トップマネジメントは,次の事項を目的とし,定期的に苦情対応プロセスをレビューすることが望ましい。

  • ● 苦情対応プロセスが継続的に適切で,妥当で,有効で,かつ,効率的であることを確実にする。
  • ● 衛生・安全・環境に関する要求事項,顧客要求事項,法令・規制要求事項とその他の関連する要求事項に不適合な事例を特定し,対処する。
  • ● 製品とサービスの欠陥を特定し,是正する。
  • ● プロセスの欠陥を特定し,是正する。
  • ● 苦情対応プロセス並びに提供する製品とサービスのリスクと機会並びに変更の必要性を評価する。
  • ● リスクと機会に関する取組みの有効性を評価する。
  • ● 苦情対応の方針と目標について,変更の必要性を評価する。

[8.6.2]

マネジメントレビューのインプットには,次の事項に関する情報を含むことが望ましい。

  • ● 法令・規制要求事項の変更,競争慣行,技術革新などの外部的要因
  • ● 方針,目標,組織構造,利用可能な経営資源,販売され又は提供された製品とサービスに関する変更などの内部的要素
  • ● 顧客満足調査とプロセスの継続的な監視の結果を含む,苦情対応プロセスの総合的なパフォーマンス
  • ● 苦情対応プロセスに関するフィードバック
  • ● 監査の結果
  • ● 関連する取組みを含む,リスクと機会
  • ● リスクと機会への取組みの有効性
  • ● 是正処置の状況
  • ● 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ(処置内容)
  • ● 改善のための提案

[8.6.3]

マネジメントレビューのアウトプットには,次の事項を含むことが望ましい。

  • ● 苦情対応プロセスの有効性と効率の改善に関する決定と処置
  • ● 製品とサービスの改善に関する提案
  • ● 必要であると特定した経営資源に関する決定と処置(例えば,教育・訓練プログラム)

改善の機会を見極めるために,マネジメントレビューの記録を維持し,活用することが望ましい。

8.7 継続的改善

組織は,苦情対応プロセスの有効性と効率を継続的に改善することが望ましい。その結果,組織は,製品とサービスの品質を継続的に改善できる。これは,是正処置,リスクと機会に関する取組み,と革新的な改善を通じて達成することができる。

組織は,苦情の再発と発生を予防するために,現存する問題と苦情につながる潜在的な問題の原因を除去する処置をとることが望ましい。

組織は,次の事項を実施することが望ましい。

  • ● 苦情対応に関する学んだ教訓と最善事例を探り,特定し,適用する。
  • ● 組織内で顧客重視に向かうことを助長する。
  • ● 苦情対応の技術革新を奨励する。
  • ● 苦情対応で模範となるような行為を評価する。

附属書A(参考)JIS Q 10001,JIS Q 10002とJIS Q 10003の相互関係

行動規範,苦情対応と外部における紛争解決に関する組織のプロセスを図A.1に示す。

苦情は,顧客又はその他の苦情申出者によって始まる。

注記 対応国際規格には,ISO 10004に関する記載があるが,JISとしては不要であり削除した。

JIS Q 10001,JIS Q 10002とJIS Q 10003の相互関係

図A.1-JIS Q 10001,JIS Q 10002とJIS Q 10003の相互関係

附属書B(参考)小規模事業者のための手引

この規格は,全ての規模の組織を対象として設計されている。しかし,小規模事業者の多くでは,苦情対応プロセスの構築と維持に投入する経営資源が限られている。この附属書では,簡単なプロセスによって最大限の有効性と効率を達成するために,力を入れ得る主要分野に焦点を当てている。

次に示す手順で,主要分野と各々の対応についての提案を,明確にしていく。

  • ● 苦情を積極的に受け入れる。「お客様にご満足いただけることが重要です。ご満足いただけなかったときは,お知らせください。適切に対応させていただきます。」といった内容の,簡単な表示を示したり,又は組織が発行するインボイス 送り状,修理伝票など)にこのような文章を載せる(4.4参照。
  • ● 苦情を収集し,記録する 附属書Cと附属書F参照。
  • ● 苦情を直接受けていない場合には,受理した旨を苦情申出者に通知する 電話又はEメールでよい。)7.4参照。
  • ● 苦情について,その妥当性,予想されるインパクト,対応適任者は誰かといった観点で評価する 7.5参照。
  • ● 現実的に可能な限り早期に解決を図る,又は苦情について調査を進め,対応方法を決定し,迅速に行動する 7.7参照。
  • ● 苦情についてどのような対応を行おうとしているのかの情報を,顧客に提示し,顧客の反応 その対応で顧客が満足するか)について評価する。満足すると判断した場合,業界内の最善事例を念頭に置きながら,顧客の合理的な期待への対応を直ちにとる(7.8参照。
  • ● 苦情を解決するために可能と思われる,あらゆる対応を行ったと判断した場合,顧客に伝え,その満足の度合いを記録する。苦情が,顧客の満足できる形で解決されていない場合,組織の決定を説明し,可能な代替の対応方法を提案する 7.9参照。
  • ● 苦情について定期的に(簡易で周期的な,とより集中的な年1回の)レビューする。このレビューの目的は,苦情に対する傾向性の有無,と苦情の発生を防止し,顧客サービスを改善し,又は顧客満足の向上を図るために変更又は適正な状態にし得ることを明らかにすることである[附属書Cと附属書Fの項目6(苦情の追跡)参照]。

上記の手順は,簡単に実施できるように作られている。業務内容が同じでなくとも,他の同様な企業を訪問し,そこでの顧客の苦情の対応方法を視察することも役に立ち得る。応用できる貴重な示唆と技術も,しばしば発見できる。

附属書C(参考)苦情受付様式

次に示す様式は,一例であり,苦情に適切に対応するときに,組織が必要とする重要な項目の詳細を,苦情申出者が提供できるようにするための,主な情報項目を含めている。

苦情申出者の詳細 [C.1]

氏名・組織名

________________________________________

住所

________________________________________

郵便番号・市区町村

________________________________________

国名

________________________________________

電話

________________________________________

ファックス

________________________________________

Eメール

________________________________________

苦情申出者の代理人の詳細(該当する場合)

_____________________________________________________

連絡先の詳細(上記と異なる場合)

_____________________________________________________

製品・サービスについての内容 [C.2]

参照番号(分かる場合又は該当する場合)

__________________

内容

______________________________________________________________

______________________________________________________________

________________________________________________________

発生した問題 [C.3]

発生日

________________________________________

内容

______________________________________________________________

______________________________________________________________

________________________________________________________

要求された救済方法 [C.4]

あり☐ なし☐

______________________________________________________________

______________________________________________________________

________________________________________________________

日付,署名 [C.5]

日付 __________________

署名 __________________

同封物 [C.6]

同封文書のリスト

_____________________________________________________________________

_____________________________________________________________________

________________________________________________________

附属書D(参考)客観性

一般 [D.1]

苦情対応プロセスにおける,客観性に関する原則は,次の内容を含む。

  • a) 公開性 苦情に関わる者に対して,広く公開され,活用可能で,理解できるようにする。要員と苦情申出者の双方が,このプロセスに従って進捗できるようにするため,明確で,広く公開されていることが望ましい。
  • b) 公平性 苦情申出者,苦情の対象となった要員,又は組織に対して,いかなる偏った処遇も避けるようにする。苦情の対象となった要員を,偏った処遇から保護するように,プロセスを設計することが望ましい。責任をとらせることではなく,問題の解決に,重点を置くのがよい。苦情対応の要員について苦情が申し立てられた場合は,その調査は独立して行うのがよい。
  • c) 機密保持 プロセスは,合理的に可能な限り,苦情申出者と顧客に関する情報を保護するように設計されることが望ましい。これは,詳細を明らかにすると迷惑又は差別を受けるのではないかとおそれて,苦情申出を思いとどまることがないようにするために,非常に重要である。
  • d) アクセスの容易性 組織は,苦情申出者が合理的な範囲でいつでもどこでも,苦情対応プロセスにアクセスできるようにすることが望ましい。苦情プロセスについての情報は,あらゆる苦情申出者に対して,明快な言語で表現され,アクセス可能な形式で,容易に入手できることが望ましい。他のサプライチェーンの関係者にも影響を与える苦情の場合は,共同対応のための調整案が作成されることが望ましい。苦情に関係する組織の供給者が,改善を実施できるように,苦情申出者からのあらゆる情報が,供給者に知らされるよう,プロセスを整備することが望ましい。
  • e) 完全性 可能な限り,関連する事実を探し,共通点を明確にして説明を検証するために,苦情に関わる双方が対話する。
  • f) 平等性 全ての人々を平等に扱う。
  • g) 感受性 個々の違い並びにニーズと期待に十分留意して,個々の事例の実態を考慮するとよい。

要員に関する客観性 [D.2]

苦情対応の手順は,苦情の対象となった要員が,客観的な扱いを受けることを確実にすることが望ましい。これは次による。

  • ● 要員のパフォーマンスに関する苦情について,迅速かつ完全に当該者に連絡する。
  • ● 当該者に状況説明の機会を与え,適切な支援が受けられるようにする。
  • ● 苦情に関する調査の進捗状況とその結果を,常に当該者に連絡する。

当該者と面談を行う前に,苦情の詳細を十分に知らせることが重要である。ただし,機密保持を遵守することが望ましい。

当該者は,プロセスによって支援されていることで安心できることが望ましい。当該者は,その苦情対応の経験を通して学び,苦情申出者の見解をより深く理解することを奨励されることが望ましい。

苦情対応手順と懲戒手順との分離 [D.3]

苦情対応手順は,懲戒手順とは分離されることが望ましい。

機密保持 [D.4]

苦情申出者の機密保持に加えて,苦情対応プロセスは,苦情が要員を対象としている場合にも機密保持を確実にすることが望ましい。このような苦情の詳細は,直接に関係する者だけに知らせることが望ましい。

しかし,苦情対応をしない理由に機密保持を使わないことが重要である。

客観性の監視 [D.5]

組織は,苦情対応が客観的に行われることを確実にするために,苦情への対応を監視することが望ましい。

測定項目には,次の事項を含んでよい。

  • ● ランダムに選んだ苦情解決事例の定期的(例えば,毎月の)監視
  • ● 苦情申出者に対する調査。客観的な扱いを受けたかどうかを尋ねる。

附属書E(参考)苦情対応フローチャート

個々の苦情に対応する手順を図E.1に示す。

苦情対応フローチャート

図E.1-苦情対応フローチャート

附属書F(参考)苦情フォローアップ様式

次に示す様式(内部限定資料)は,一例であり,組織が苦情のフォローアップを行うときに役立ち得る,主な情報を示したものである。

苦情受付に関する詳細 [F.1]

苦情受付日

_____________________________________

苦情受付時刻

_____________________________________

受付者

_____________________________________

苦情受付方法

電話□

Eメール□

インターネット□

来訪□

郵便□ その他□

固有の識別コード

_____________________________________

苦情申出者に関する詳細 [F.2]

苦情申出者用の書式を参照

苦情参照番号

苦情関連データ

苦情情報源

発生した問題 [F.3]

問題発生日

再発問題

あり☐ なし☐

問題カテゴリ

1.☐ 製品の未配

2.☐ サービスの未提供/一部だけの提供

3.☐ 製品の配達遅れ

遅れた期間:___________________________

4.☐ サービス提供の遅れ

遅れた期間:___________________________

5.☐ 欠陥製品

6.☐ 不十分なサービス

詳細:___________________________

___________________________

___________________________

7.☐ 注文に適合しない製品

8.☐ 注文していない製品

9.☐ 被った損害

10 ☐ 保証履行の拒否

11 ☐ 販売の拒否

12 ☐ サービス提供の拒否

13 ☐ 営業活動/販売方法

14 ☐ 不正確な情報

15 ☐ 不適切な情報

16 ☐ 決済方法,支払方法

17 ☐ 価格

18 ☐ 価格の引上げ

19 ☐ 追加料金の請求

20 ☐ 不当な費用/請求

21 ☐ 契約条件

22 ☐ 契約範囲

23 ☐ 損害の査定

24 ☐ 補償金の支払拒否

25 ☐ 不適切な補償

26 ☐ 契約修正

27 ☐ 契約履行上の不備

28 ☐ 契約の解約/解除

29 ☐ サービスの解約

30 ☐ ローンの返済

31 ☐ 要求された金利

32 ☐ コミットメントの不遵守

33 ☐ 不正確なインボイス

34 ☐ 苦情対応の不当な遅れ

35 ☐ その他の問題:

________________________________________________________________________

________________________________________________________________________

_______________________________________________________________

追加情報

________________________________________________________________________

________________________________________________________________________

_______________________________________________________________

苦情の評価 [F.4]

苦情の現実的と潜在的な影響を及ぼす範囲と重大さを評価する。

重大さ:________________________________________________________________

_______________________________________________________________

複雑さ:______________________________________________________________

_______________________________________________________________

影響:_________________________________________________________________

_______________________________________________________________

安全上の懸念

あり☐

なし☐

直ちに処置する必要性 あり☐

なし☐

直ちに処理できるか

はい☐

いいえ☐

補償の可能性

あり☐

なし☐

苦情の解決 [F.5]

要求された救済措置

あり☐

なし☐

実施する処置

36 ☐ 製品の引渡し

37 ☐ 製品の修理/手直し

38 ☐ 製品の交換

39 ☐ 販売の解約

40 ☐ 保証の履行

41 ☐ 約束の履行

42 ☐ 契約の締結

43 ☐ 契約の解約/解除

44 ☐ インボイスの取消し

45 ☐ 情報

46 ☐ 損害査定の修正

47 ☐ 補償金の支払 金額:____________________________

48 ☐ 頭金の払戻し 金額:_____________________

49 ☐ 他の支払の払戻し 金額:______________

50 ☐ 値引き 金額:_________________________________________

51 ☐ 支払機関

52 ☐ 謝罪

53 ☐ その他の処置:

________________________________________________________________________

_______________________________________________________________

苦情の追跡 [F.6]

【 表 1 】
実施した処置 日付 氏名 備考
苦情申出者に対する受理通知
苦情の評価
苦情の調査
苦情の解決
苦情申出者への情報伝達
修正
修正の検証
苦情の完結

附属書G(参考)苦情への対応

苦情への対応項目に関する組織の方針には,次の事項を含めることができる。

  • ● 払戻し
  • ● 交換
  • ● 修理/手直し
  • ● 代替品
  • ● 技術支援
  • ● 情報
  • ● 照会
  • ● 財務的な支援
  • ● その他の支援
  • ● 補償
  • ● 謝罪
  • ● 好意による贈り物又は見舞い
  • ● 苦情から発生する,製品,サービス,プロセス,方針又は手順の変更に関する説明

考慮事項には,次の各項を含めることができる。

  • ● 苦情のあらゆる側面に対処する。
  • ● 適宜フォローアップを行う。
  • ● 苦情申出者と同様の被害を被ったかもしれないが正式な苦情を提示しなかった他の顧客に対して,救済処置を行うのが適切かどうか。
  • ● 各種の対応に対する権限のレベル
  • ● 関連する要員へ情報を広める。

附属書H(参考)エスカレーション・フローチャート

エスカレーション・フローチャートを図H.1に示す。

エスカレーション・フローチャート

図H.1-エスカレーション・フローチャート

附属書I(参考)継続的な監視

一般 [I.1]

この附属書は,苦情対応プロセスの,効果的かつ効率的で,継続的な監視のための一般的な指針である。採用された方法は,組織の種類と規模に応じたものであることが望ましい。

マネジメントの責任 [I.2]

苦情対応プロセスのパフォーマンスを監視し,報告する責任者,と是正処置を行う責任者が,その役割を果たすための力量をもっていることを確実にすることが重要である。

考慮され得る責任の幾つかの種類を,次に示す。

  • a) トップマネジメントは,次の事項を行うことが望ましい。
    • ● 監視の目標を明確にする。
    • ● 監視の責任を明確にする。
    • ● 監視プロセスのレビューを行う。
    • ● 改善を行うことを確実にする。
  • b) 苦情対応のマネジメント責任者は,次の事項を行うことが望ましい。
    • ● パフォーマンスの監視,評価と報告のためのプロセスを確立する。
    • ● 苦情対応プロセスのレビューで明らかとなったパフォーマンスについてトップマネジメントに報告し,必要なあらゆる改善処置がとれるようにする。
  • c) 組織内で苦情対応に関わるその他の管理者は,次の事項を確実にすることが望ましい。
    • ● 自らの責任範囲において,苦情対応プロセスを適切に監視し,記録する。
    • ● 自らの責任範囲において,是正処置を行い,記録する。
    • ● 自らの責任範囲において,適切な苦情対応データが,監視プロセスに対するトップマネジメントレビューで利用できるようにする。

パフォーマンスの測定と監視 [I.3]

一般 [I.3.1]

組織は,苦情対応プロセスのパフォーマンスを,あらかじめ定められた基準に照らして評価し,監視することが望ましい。

組織のプロセス,製品とサービスは,大きく異なり,それらに適したパフォーマンス監視基準もまた,大きく異なる。組織は,その固有の状況に関するパフォーマンスの監視基準を策定しておくことが望ましい。一例をI.3.2に示す。

パフォーマンスの監視基準 [I.3.2]

苦情対応プロセスのパフォーマンスを監視するときに,考慮して含めることのできる基準の例には次のようなものがある。

  • ● 苦情対応方針と目標が,確立され,維持され,かつ,適切に活用されているか。
  • ● 苦情対応に対するトップマネジメントのコミットメントについての要員の認識
  • ● 苦情対応の責任が,適切に割り振られているか。
  • ● 顧客と接する要員が,その場で苦情を解決する権限を与えられているか。
  • ● 顧客と接する要員のための,対応に関する自由裁量の限度が定められているか。
  • ● 苦情対応のために,特別な要員が任命されているか。
  • ● 顧客と接する要員で,苦情対応の教育・訓練を受けている要員の割合
  • ● 苦情対応の教育・訓練の有効性と効率
  • ● 苦情対応を改善するための,要員からの提案件数
  • ● 苦情対応に対する要員の取組み姿勢
  • ● 苦情対応の監査,又はマネジメントレビューの頻度
  • ● 苦情対応の監査又はマネジメントレビューからの勧告を実施するのに要した時間
  • ● 苦情申出者との対応に要した時間
  • ● 苦情申出者の満足度
  • ● 適切な場合には,要求された是正処置並びにリスクと機会に関する取組みのプロセスについての有効性と効率

監視データ [I.3.3]

データの監視は,苦情対応のパフォーマンスに対する直接的な指標となるため,重要である。監視データには,次に示す事項の数又は割合を含めることができる。

  • ● 受理した苦情
  • ● 受理した時点で解決した苦情
  • ● 優先順位を間違えた苦情
  • ● 同意した期限後に知らされた苦情
  • ● 同意した期限後に解決した苦情
  • ● 外部の解決方法に回された苦情 7.9参照
  • ● 再発した苦情又は苦情になっていない頻発する問題
  • ● 苦情から得られた,手順における改善

次のような理由から,データを解釈するときには,注意することが望ましい。

  • ● 対応時間といった客観的なデータは,プロセスがどの程度適切に機能しているかを表すことができるが,苦情申出者の満足度についての情報は得られない場合もある。
  • ● 新しい苦情対応プロセスを導入した後に苦情件数が増加した場合には,製品とサービスの問題というよりは,プロセスの有効性が影響している場合もあり得る。

附属書J(参考)監査

組織は,その苦情対応プロセスの有効性と効率を,継続的に改善することが望ましい。そのため,プロセスのパフォーマンスと結果は,定期的に監視して,表面化している問題と潜在的な問題の原因を明確にし,取り除くとともに,改善の機会を見いだすことが望ましい。

苦情対応の監査は,苦情対応プロセスの,所定の基準に対するパフォーマンスに関する情報提供によって,改善を促進することを主な目標としている。そのような基準には,苦情対応に関する,様々な方針,手順と標準が含まれ得る。

苦情対応プロセスのパフォーマンスを検証する場合,監査では,プロセスが所定の基準に,どの程度適合しているかを評価するとともに,目標を達成するためのプロセスの適切性についても評価する。

例えば,次に示す事項を評価するために監査を行うことができる。

  • ● 組織の方針と目標に対する,苦情対応の手順の適合性
  • ● 苦情対応の手順が遵守されている程度(実施状況)
  • ● 目標を達成するための現在の苦情対応プロセスの能力
  • ● 苦情対応プロセスの長所と短所
  • ● 苦情対応プロセスの改善の機会とその結果

苦情対応の監査は,品質マネジメントシステム監査の一環として計画し,実施することができる。マネジメントシステム監査に関する詳しい情報について,組織は,JIS Q 19011を参照することが望ましい。

行動指針、国際規格作成〔ISO / IEC専門業務用指針(第1部,第2部,補足指針―ISO専用手順・IEC専用手順) 国際規格作成手順/貿易の技術的障害に関する協定(WTO /TBT協定)(対訳) 政策関係〈WTO / TBT協定〉/ ISOとCENの間の技術協力に関する協定(ウィーン協定) 政策関係〈ウィーン協定及びドレスデン協定〉/ ISO / TMB政策・原則声明文 政策関係 〈国際市場性〉/国際標準化戦略目標 経済産業省 動向関係〕、国際標準化機関、その他

品質マネジメント関連 主なJIS規格 一覧

【 表 2 】
規格番号 規格名称
JISQ10001品質マネジメント-顧客満足-組織における行動規範のための指針の規格
JISQ10002品質マネジメント-顧客満足-組織における苦情対応のための指針
JISQ10003品質マネジメント-顧客満足-組織の外部における紛争解決のための指針
JISQ10019品質マネジメントシステムコンサルタントの選定とそのサービスの利用のための指針
JISQ13485医療機器-品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項
JISQ17021-3適合性評価-マネジメントシステムの審査と認証を行う機関に対する要求事項-第3部:品質マネジメントシステムの審査と認証に関する力量要求事項
JISQ9000品質マネジメントシステム-基本と用語
JISQ9001品質マネジメントシステム-要求事項
JISQ9002品質マネジメントシステム-JIS Q 9001の適用に関する指針
JISQ9004品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針
JISQ9005品質マネジメントシステム-持続的成功の指針
JISQ9091品質マネジメントシステム-プラスチック再生材料-事業プロセスパフォーマンスに関する指針
JISQ9100品質マネジメントシステム-航空,宇宙と防衛分野の組織に対する要求事項

目録の使い方、JI S情報の入手方法、A ~ Zの19部門別JI S、TS(標準仕様書)及びTR(標準報告書)一覧(総目録)対応国際規格、廃止・切り替え情報表示。便利な規格タイトル等からの、五十音順索引。ISO/IEC-JIS対応表、JIS原案作成団体・機関一覧

通則、分析方法〔鉄及び鋼/フェロアロイ〕、分析方法〔鉄鉱石/マンガン鉱石/クロム鉱石/ほたる石〕

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