JIS Q 9023 マネジメントシステムのパフォーマンス改善 方針管理の指針|最新 JIS規格 一覧|改正 更新情報|制定

JIS Q 9023 マネジメントシステムのパフォーマンス改善 方針管理の指針の規格 JISQ9023の基本・名称・用語・知識・JIS最新改正更新情報に関して解説!

マネジメントシステムとは,品質マネジメントシステム規格であるISO 9000シリーズや 環境マネジメントシステム規格であるISO 14000シリーズに代表される,「組織が方針と目標を定め,その目標を達成するためのシステム」に関する規格。ISO/IECと JISCで開発されているマネジメントシステム規格について,QMSとEMSの規格開発経緯,規格開発組織の構造,規格名称など[MSS(Management System Standard]

この規格は,品質管理の主要な活動の一つである方針管理に関する次の三つの指針,方針管理を実践する中核となる各部門の管理者を対象にした,各部門における方針管理の具体的な進め方の指針;トップマネジメント,と組織全体の方針管理に責任をもつ人を対象にした,組織全体としての方針管理の進め方の指針;トップマネジメント,と組織全体の方針管理に責任をもつ人を対象にした,方針管理を組織的に推進するための教育,ツールと評価の指針を示す。

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マネジメントシステムのパフォーマンス改善 方針管理の指針 規格 一覧表

JIS Q 9023

マネジメントシステムのパフォーマンス改善 方針管理の指針の一覧

最新 JIS Q9023 規格の詳細 更新日 情報

JIS Q 9023の最新の詳細や改正,更新日の情報!

JIS 改正 最新情報

JIS規格番号 JIS Q9023 JIS改正 最新・更新日 2018年03月20日
規格名称 マネジメントシステムのパフォーマンス改善-方針管理の指針
英語訳 Performance improvement of management systems-Guidelines for Policy Management
対応国際規格 ISO
主務大臣 経済産業 制定 年月日 2003年02月20日
略語・記号 No JISQ9023:2018

JIS規格「日本工業規格」は、2019年7月1日の法改正により名称が「日本産業規格」に変わりました。

一般 [0.1]

顧客と社会のニーズ,それらを満たす製品とサービスを提供するために必要となる技術,組織で働く人々の価値観,知識と技能,パートナ(供給者,関係会社など)との連携など,組織が置かれている状況は常に変化している。組織が事業を継続し,発展させていくためには,これらの変化を的確に把握し,迅速に改善と革新を行っていくことが求められる。このため,トップマネジメントは組織の内外の状況を基に目指す姿を定め,各部門はこれを達成するために必要な改善と革新を実践することが大切である。

しかし,多くの人が働く組織においては,トップマネジメントの考えと策定した目標が組織の第一線まで伝わらなかったり,改善と革新のための取組みが日常業務のために後回しにされたり,複数の部門の間で密接な連携が図られなかったり,第一線の情報が目標と計画の策定にい(活)かされなかったりする場合が多い。このような状況になると,せっかくの取組みが期待どおりの効果を発揮できない。こうした問題に対応するために,品質管理の世界で培われた「品質を工程で作り込む」(狙いどおりの製品とサービスを経済的に生み出すために,プロセスを定め,それに従って仕事を行う。)の考え方に基づいて,プロセスの改善と革新を組織的に促進するために生み出された活動が「方針管理」である。方針管理が適切に行われれば,挑戦的な取組みが活発に行われるようになり,人の成長と働く喜びにもつながる。方針管理は,変化を乗り越えるための,さらには変化を事業の発展に結び付けるための組織運営の基軸であり,この良否によって組織の持続的な成功が大きく左右される。したがって,組織全体としてその強化を図る必要がある。

この規格は,方針管理の基本的な考え方とプロセス,方針管理の進め方に関する指針,並びに方針管理を組織的に推進する場合の指針をまとめたものである。

なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。

他の規格との一貫性 [0.2]

この規格は,方針管理を対象としており,独立して使用することを意図して作成されているが,マネジメントシステムのパフォーマンス改善に関する一連の規格である,日常管理を対象とするJIS Q 9026,改善活動を対象とするJIS Q 9024,並びに品質保証を対象とするJIS Q 9025とJIS Q 9027と整合性のある規格として相互に補完して使用することもできる。特に,方針管理は,日常管理と合わせて実施するのが効果的なため,JIS Q 9026と合わせて使用するのがよい。

なお,総合的品質管理(TQM:Total Quality Management)における方針管理,日常管理,小集団改善活動,品質管理教育と品質保証の役割を,附属書Aに示す。また,この規格は,JIS Q 9005に規定された

品質マネジメントに関する支援技法として使用することを想定して作成している。

JIS Q 9001とJIS Q 9004との関係 [0.3]

この規格は,組織がJIS Q 9001とJIS Q 9004に基づくマネジメントシステムを,効果的かつ効率的に運営管理するための支援技法として使用することを想定して作成している。

他のマネジメントシステムとの両立性 [0.4]

この規格は,環境マネジメント,労働安全衛生マネジメント,財務マネジメントなどのマネジメントシステムに関する固有な支援技法として作成してはいないが,関連するマネジメントシステムのパフォーマンス改善を支援する技法として組織が使用することができる。

適用範囲 [1]

この規格は,品質管理の主要な活動の一つである方針管理に関する次の三つの指針を示す。

  • 方針管理を実践する中核となる各部門の管理者を対象にした,各部門における方針管理の具体的な進め方の指針
  • トップマネジメント,と組織全体の方針管理に責任をもつ人を対象にした,組織全体としての方針管理の進め方の指針
  • トップマネジメント,と組織全体の方針管理に責任をもつ人を対象にした,方針管理を組織的に推進するための教育,ツールと評価の指針

この規格は,製造業とサービス業だけでなく,プロジェクトで行う事業,複数の組織が連携して行う事業,営利を目的としない事業など,あらゆる業種と業態に適用できる。

引用規格 [2]

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。

JIS Q 9000 品質マネジメントシステム-基本と用語

用語と定義 [3]

この規格で用いる主な用語と定義は,JIS Q 9000によるほか,次による。

方針管理 [3.1]

方針を,全部門と全階層の参画の下で,ベクトルを合わせて重点指向で達成していく活動。

注記 方針には,中長期方針,年度方針などがある。

方針 [3.2]

トップマネジメントによって正式に表明された,組織の使命,理念とビジョン,又は中長期経営計画の達成に関する,組織の全体的な意図と方向付け。

注記1 方針には,一般的に,次の三つの要素が含まれる。ただし,組織によってはこれらの一部を方針に含めず,別に定義している場合もある。

  • a) 重点課題
  • b) 目標
  • c) 方策

注記2 トップマネジメントの方針を受けて,組織内の責任者が表明した方向付けを方針と呼ぶことがある。

例 事業部長方針,支店長方針,部長方針

注記3 特定のマネジメント領域の方針であることを示すために,修飾語を用いることがある。

例 品質方針,環境方針

重点課題 [3.3]

組織として優先順位の高いものに絞って取り組み,達成すべき事項。

目標 [3.4]

目的を達成するための取組みにおいて,追求し,目指す到達点。

方策 [3.5]

目標を達成するために,選ばれる手段。

実施計画 [3.6]

方策を実施して目標を達成するために必要な資源とその運用プロセスを定めることに焦点を合わせた計画。

管理項目 [3.7]

目標の達成を管理するために,評価尺度として選定した項目。

管理水準 [3.8]

安定した又は計画どおりの,プロセスの状態を表す値又は範囲。

注記1 管理水準と実際の値とを比較することでプロセスが安定した状態,又は計画どおりの状態にあるかどうかを判定できる。

注記2 管理水準は,次の式などで表すことができる。

x±3s

x: 平均値

s : 標準偏差

部門 [3.9]

特定の使命と役割を割り付けられた,組織を構成する各々の単位。

注記1 部門は,典型的には,その統括を行う管理者と複数の構成員から成る。

注記2 一つの部門はより細かい部門に分けられる場合が多い。部門には,部,課,グループなどが含まれる。

部門横断チーム [3.10]

部門単独では解決が困難な重点課題に対処するために,異なった部門から,活用できる全ての関連知識と技能を結集し,編成されたチーム。

注記1 部門横断チームには,組織の設計,技術,製造,営業とサービスの部門並びに他の該当する部門の要員を含む。また,顧客又はパートナを含めてもよい。

注記2 部門横断チームは,改善チームの一つの形態である。

方針管理のプロセス [4]

方針管理のプロセスを図1に,時間的な流れを表1に示す。

なお,方針管理を進めるに当たっては,その基本を事前に理解しておく必要がある。方針管理の基本的な考え方を附属書Bに,方針管理において重要な役割を果たす方針の構成要素を附属書Cに示す。

方針管理のプロセスの中核となるのは,中長期経営計画を踏まえて実施される次の四つの事項である。

  • 組織方針の策定
  • 組織方針の展開
  • 組織方針の実施とその管理
  • 期末のレビュー

このうち,組織方針の策定では,中長期経営計画,経営環境の分析,前期の期末のレビューの結果などを踏まえて,当該の期(年度など)において組織として達成すべき方針(重点課題,目標と方策)を定める。また,組織方針の展開では,策定した組織方針を,組織の階層に従って下位の方針に展開する。このとき,上位の管理者と下位の管理者(複数)が集まってすり合わせを行い,上位の方針と下位の方針とが一貫性のあるものになるようにする。このために,上位の管理者は自分の方針を説明し,下位の方針への分解と具体化を行うとともに,下位の管理者は自分が担当する部門の状況を踏まえて提案を行い,上位方針に対する追加と修正を行う。さらに,下位に展開された方針(方策)が確実に実施されるよう,具体的な実施計画とその進捗状況を評価するための管理項目を設定する。期中においては,実施計画どおり活動を進め,計画どおり進んでいないことが明らかになった場合には,原因を追究し,方針と実施計画の変更を含む必要な処置をとる。期末においては,各方針と実施計画の達成状況と実施状況を評価し,その期における組織方針の達成状況と実施状況を総合的にレビューする。レビューの結果については,経営環境の変化などを考慮した上で,次期の方針に反映する。

方針管理のプロセス

図1-方針管理のプロセス

注記1 この図では,組織全体が組織-部-課とグループという3階層によって構成する場合を例示している。組織によっては,2階層の場合もあれば,より多くの階層に分かれている場合もある。

注記2 下位については,実施計画だけで,方針を策定しないこともある。また,上位の組織と部が,方針を下位に展開せず,実施計画を直接策定することもある。

前期:n-1期当期:n期次期:n+1期
期中n-1期の実施計画に基づく実施, 管理項目による結果の評価,並びに方針と実施計画の見直しn期の実施計画に基づく実施,管理項目による結果の評価,並びに方針と実施計画の見直しn+1期の実施計画に基づく実施,管理項目による結果の評価,並びに方針と実施計画の見直し
期末 期末のレビュー
n期方針の策定と展開,並びに実施計画の策定
期末のレビュー
n+1期方針の策定と展開,並びに実施計画の策定
期末のレビュー
n+2期方針の策定と展開,並びに実施計画の策定
注記1 期の単位は,組織の運営方法によって,1年,半年,3か月などがある。 注記2 期末のレビューは,期を1年とした場合,期の終わる約2~3か月前から開始する場合が多い。

部門における方針管理の進め方 [5]

中期計画の策定 [5.1]

使命と役割を果たすために,中長期的視点で活動を実施する必要がある部門の場合,期ごとに方針を策定しているだけでは継続性が得られない。このため,このような部門を統括する管理者は,組織の中長期経営計画を踏まえた上で,市場の環境と部門の現状を分析し,部門独自の中期計画を策定するのがよい。

特に,新製品と新技術の開発,顧客と販路の開拓と深耕,サプライチェーンのグローバル展開,情報システムの構築,人材育成など,結果が出るまでに数箇年を要する活動には,3か年程度の計画を策定するのがよい。

中期計画の策定は,組織の中長期経営計画の策定の方法【6.2参照】に準じて行うのがよい。

注記 ここでいう部門とは,部,課,グループなどに対応する。

方針の策定と展開 [5.2]

方針の策定と展開のアウトプット [5.2.1]

部門を統括する管理者は,上位方針,部門の中期計画,前期のレビューの結果,部門を取り巻く経営環境の分析の結果などに基づいて,次の三つを策定又は作成するのがよい。

なお,方針書,実施計画と管理帳票の様式の例を図D.1~図D.3に示す。

  • 部門の方針:部門が当該の期に取り組む重点課題,達成すべき目標,と目標を達成するための方策をまとめたもの
  • 実施計画:部門が実施する各々の方策について実施する項目を時系列に展開し,実施できるレベルまで具体化したもので,誰が,何を,いつ,どこで,どのように行うかを示したもの
  • 進捗を管理するための管理項目,管理水準と管理帳票:方針と実施計画が計画どおり進捗しているかどうかを評価するための尺度として選定した項目,その達成状況が適切かどうかを判断するための基準として設定した水準(期の途中における目標値と管理限界値),更にこれらの水準と実際の値,並びに水準が未達成の場合の原因と処置を書き込み,関係者が進捗の状況をすぐに把握できるよう,グラフ又は表にしたもの

これらのアウトプットの相互関係,並びに上位方針,部門の中期計画,前期のレビューの結果,部門を取り巻く経営環境の分析の結果などとの関係を図2に示す。

  • 部門の方針は,上位の方針,関連する他部門とパートナの方針,並びに下位の方針と一貫性がなければならない。また,前期のレビューの結果,と部門を取り巻く経営環境の分析の結果を考慮したものでなければならない。
  • 実施計画は,そのとおり実行することで,対応する方針の目標が達成できるものになっていなければならない。また,その実現のために必要となる資源を確保していなければならない。
  • 管理項目は,期末における目標の達成の可能性を高める視点で選んだもので,対応する方針と実施計画の進捗を期中に適宜評価できるものでなければならない。また,管理水準は,実施計画の内容と時間的に整合のとれたものでなければならない(実施計画の進行に応じて段階的に変わっていかなければならない。)。
アウトプットと相互関係

図2-方針の策定と展開における主なアウトプットと相互関係

部門として目指す姿の明確化-部門方針の策定 [5.2.2]

部門を統括する管理者は,当期の上位方針の達成に貢献するために,また,中長期経営計画を達成する上で部門の使命と役割をより効果的かつ効率的に果たせるようになるために,部門として当該の期に目指す姿を明確に示した方針を策定するのがよい。この方針では,重点課題,目標と目標を達成するための方策を明確にする。

部門を統括する管理者は,目指す姿の明確化の議論において,次の視点を考慮するのがよい。

  • 顧客の満足とその他の利害関係者(社会,地域など)の満足
  • 財務結果と方針の実施状況との関係
  • 成功要因と失敗要因の業務プロセスの視点からの分析,並びに成功と失敗から学習した改善案
  • 人材の育成,並びに従業員とパートナ(供給者,関係会社など)の満足
  • a) 重点課題の決定 部門が置かれている内外の状況を分類と整理して,取り組むべき重要な課題(重点課題の候補)を抽出し,絞込みを行って重点課題を決定するのがよい。

重点課題の候補は,次の各側面について検討し,抽出するのがよい。重点課題の候補は,当該部門の実態に基づいた具体的な表現にするのがよい。「AA(対象)をBB(作用)する」と表現すると具体的になる。

  • 上位の方針:提示されている組織の重点課題,目標と方策を確認し,それと部門の使命と活動領域を照らし合わせて,関係する項目を明確にする。
  • 部門の中期計画:部門の中期計画を策定している場合,この中から当該の期に実施すべき項目を明確にする。
  • 経営環境の分析から出てきた課題:部門を取り巻く経営環境を分析し,機会とリスクを明らかにする。また,部門の能力と特徴の分析,その結果と競合他組織の能力と特徴との比較分析を行い,部門の強みと弱みを明らかにする。
  • 期末のレビューから出てきた課題:前期において,目標が未達成で現在に持ち越してしまった課題,とトップマネジメントなど上位者によるレビューで指摘された項目を整理する。
  • 下位からの提案,関連部門からの依頼事項:下位から提案のあった項目,と関連部門から依頼された事項を整理する。

抽出した重点課題の候補は,次の手順で絞り込むのがよい。

  • 類似したもの又は因果関係にあるものをあらかじめグルーピングしてまとめる。
  • 重要性と緊急性を評価し,3~5項目を目安に絞り込む。部門が担当する業務範囲によっては,取り上げたい課題が多くなることがあるが,課題を確実に達成するためには,資源を集中して対応する課題を重点指向で絞り込む。

絞り込んだ部門の重点課題を上位の管理者へ提案し,関連部門との連携を含めた上位者の意向を踏まえて重点課題を決定するのがよい。

  • b) 目標の設定 目標は,決定した重点課題ごとに設定するのがよい。この場合,次の事項に注意する。
  • 達成すべき状態と達成期日を明確にする。
  • 上位方針,と策定している場合は,部門の中期計画を勘案し,一貫性のあるものにする。
  • 上位の管理者,関係部門,該当する部門横断チームなどとすり合わせ【5.2.3参照】を行い,必要な場合は当初に設定した目標を見直す。

目標値の設定は,次の手順で行うのがよい。

  • 過去数年間の実績の推移,競合する他組織の水準などを調査する。必要に応じて,製品とサービスの種類別などの層別を行う。
  • 現状の実績値と競合する他組織の水準を考慮しながら,上位方針の目標値から必要とされる水準を確実に達成できるように設定する。
  • 部門の中期計画において目標値が設定されている場合には,必要とされる水準を達成できる目標値であるかを確認する。
  • c) 目標達成のための方策の立案 目標を達成するための方策の立案は,決定した重点課題ごとに,次の手順で行うのがよい。
  • 要因の明確化:現状を調査と把握したり,将来の結果を予想したりすることで,重点課題に関する業務プロセスにおいて,目標の達成に重要な影響を与える要因を見極める。
  • 方策の確定:重要な要因を望ましい状態にする手段を検討と列挙し,絞り込みを行い,方策として実施するものを確定する。

要因の明確化に当たっては,次の事項を考慮するのがよい。

  • 現場で現物を見ながら現実的に考えることを基本とする(この基本的な考え方を三現主義ということがある。)。
  • 要因について,関係する組織の人,施設と設備,実施方法,使用する部品,材料とサービスなどの側面から検討する。「なぜなぜ」を繰り返すことで検討が深まる。

方策の確定に当たっては,次の事項を考慮するのがよい。

  • 関係者を集めて,目標を達成するための方策(手段)についてアイデアを出し合う。方策は,「XX(手段)によって,AA(対象)をBB(作用)する」と表現すると具体的になる。
  • 一つの重要な要因に対して,考え出した手段を,更にそのためにどのようにするかを繰り返し,実施可能な複数の具体的な方策にブレークダウンする。
  • 方策は,業務プロセスの改善に焦点を当てて検討する。
  • 考え出した各方策の効果,と実施に当たって生じると思われる障害を評価する。また,投入が必要な人,施設と設備,財務資源などを割り出し,費用対効果を事前に評価する。これらの結果に基づいて,方策として実施するものを絞り込む。
  • 確定した方策の実施に必要な投資予算を計上し,必要とする時期に入手できるようにする。

部門を統括する管理者は,部門が将来目指す方向とそのために必要な行動を方針として明示し,部門の人々を指揮し,適切な方向に導くためのリーダーシップを発揮するのがよい。リーダーシップを発揮する上で,次の事項を考慮するのがよい。

  • 組織の目的と方向と部門の目的と方向とを一致させる。
  • 組織の使命,理念とビジョン,並びに中長期経営計画を実現するために,部門最適ではなく,全体最適に視点を置き,関係者と連携した協働を率先垂範する。
  • 上位者,関係部門,部門横断チームなどへ建設的な提案と進言を行い,また,下位の管理者と担当者,パートナなどからの提案を積極的に聴き,十分な意思疎通の下で部門の方針を合意形成する。
  • 部門の方針の達成へ向けて,部門の人々全員が,学習と改善への参画並びに自己実現できる内部環境を作り,維持する。

すり合わせ [5.2.3]

部門を統括する管理者は,部門の方針,実施計画などを策定するに当たって,上位の管理者,下位の管理者と担当者,部門の方針達成に関係する他部門とパートナなどとすり合わせを十分に行うのがよい【図3参照】。これによって上位から下位までの方針の展開がより一貫したものになる。

すり合わせの対象者

図3-すり合わせの対象者

上位の管理者が招集する,上位の管理者,並びに関連する他部門とパートナとのすり合わせにおいては,次のことを行うのがよい。

  • すり合わせに先立ち,期末のレビューのときに,自部門の重点課題と自部門が次期に実施したいことをまとめて,上位の管理者に報告と説明する。併せて,次期に上位の管理者に重点課題として取り上げてほしいことを提案する。
  • 上位の方針案とその意図を理解する。
  • 上位の方針案を受けた自部門の方針案とその根拠を明確にし,説明する。
  • 自部門の方針案に対して上位から示された要望と期待について自部門の状況と対比し,ギャップがある場合には,対応を検討するとともに,上位の管理者と相談する。
  • 自部門の方針案と中期計画の達成に必要となる経営資源を要望する。
  • 自部門の方針案の達成に必要となる関連する他部門とパートナの支援を要請する。
  • 関連する他部門とパートナの方針案について理解し,協力する。

部門を統括する管理者は,自分が招集する,下位の管理者と担当者,並びに関連する他部門とパートナとのすり合わせにおいて,次の事項を行うのがよい。

  • 下位の管理者と担当者,並びに関連する他部門とパートナが参加するすり合わせのための場(会議など)を設ける。
  • 上位の方針案と部門の方針案の意図を十分説明するとともに,下位の管理者と担当者からそれぞれの職場の実状を踏まえて,方針案に対する意見を提案してもらい,双方向の議論の場とする。
  • 下位の管理者と担当者が,上位の方針案と部門の方針案に対する理解を深め,連携して取り組み,方針についての責任者となり目標を達成していくよう,自覚を促す。
  • 部門の方針に関わる下位の方針と実施計画に責任をもつ者を指名し,具体的な案を立案させる。下位の方針案と実施計画案に対する要望と期待を伝える。
  • 関連する他部門とパートナとの連携の必要性を明確にし,連携する内容と連絡者を決定する。必要に応じて協力を要請し,他部門とパートナと連携して活動を計画する。
  • 一部門だけでは解決できない課題に対して,部門横断チームが結成され,チームメンバーへの参加が要請された(又は要請する)場合は,部門横断チームにおける役割と参画の仕方を確認した上で,適任者を選任する(又は適任者の選任を依頼する。)。
  • 方策が確定できない場合など,必要に応じて,下位の管理者と担当者,関連する他部門,パートナなどをメンバーとする横断チームを編成し,目標の達成に関わる情報の分析,方策の立案と実施などを担当させる。
  • 部門の方針案と,これを展開した下位の方針案と実施計画との連携がとれていることを確認する【図4参照】。下位の方針案と実施計画が達成された場合に部門の方針(目標)が達成されるか,どの下位の方針と実施計画の寄与度が大きいかを検討する。また,部門の方針案から下位の方針案に,更に実施計画になるにつれてより具体的になっているか確認する。系統図,マトリックス図などの技法が活用できる。
  • 方策を実施するために必要な資源と利用可能な資源とを対比し,目標を達成する上での障害の除去を検討する。
方針の展開

図4-方針の展開
注記 方策の全てが展開されるわけではなく,例えば,「方策3」のように,上位の管理者が自ら実施する方策もある。

実施準備 [5.2.4]

部門を統括する管理者は,下位の管理者と担当者と協力し,期がスタートする前に,実施のための準備として次の事項が確実に行われているようにするのがよい。

  • 資源の準備
  • 実施計画の立案
  • 管理項目と管理水準の設定,並びに管理帳票の準備
  • a) 資源の準備 部門の方針に基づいて展開した方策を計画どおり達成できるように,予算を含む必要な資源を適切な時期までに準備するのがよい。また,方針の実施に必要な固有技術と管理技術(改善の手順,技法など)の教育と訓練を行うのがよい。

注記1 準備する資源には,人,施設と設備,業務環境,情報,知的資源,供給者などのパートナ,財務資源などを含む。

注記2 改善の手順としては,課題達成型QCストーリー(主に,新規課題の達成に適用できる。),問題解決型QCストーリー(主に,慢性的な問題の解決に適用できる。)などがある。

  • b) 実施計画の立案 部門の方針に基づいて導かれた方策のうち,更に下位に展開しないものについては,実施計画を立案するのがよい。

実施計画を立案するに当たっては,当該の方策を実施する上でぶつかると考えられる障害と不測事態,並びにそれらの影響を洗い出し,これらに対応するための活動が含まれるようにするのがよい。

実施計画では,次の事項を明確にするのがよい。

  • 実施計画の責任者,並びにその責任と権限
  • 対応する上位の方針,並びにその目標値と達成期限
  • 月単位など,あらかじめ定められた期間に実施する具体的な活動項目と主担当者。活動項目には,調査と分析,改善活動などの実施を含む。
  • 実施計画の進捗を管理するために用いる管理項目,管理水準と管理帳票
  • 計画どおりに進まなかった場合に,必要な処置をとる責任者
  • 自部門の活動がもたらす他部門への影響と協力内容に基づく,必要な支援体制

実施計画の内容については,具体的な活動を行うに当たって,事前に部門内外の関係者に説明し,理解を深めておくのがよい。

部門を統括する管理者は,実施計画に関係する人々の実施計画に対する合意を確実にし,一人一人の業務計画に反映させるのがよい。また,実施計画達成に対する関与と結果によって貢献度を評価するのがよい。

  • c) 管理項目と管理水準の設定,並びに管理帳票の準備 期の途中と期末における方針,方策と実施計画の達成状況と実施状況を評価するために,管理項目と管理水準を設定するのがよい。管理項目と管理水準を設定するに当たっては,次の事項を考慮するのがよい。
  • 管理項目は,期の途中段階において定期的にチェックできるものを選ぶ。結果で確認していたのでは処置が遅くなる場合は,結果を導く要因を総合的に評価する尺度を代替的な管理項目として用いる。また,管理項目の定義が明確であり,効率的に測定できるものであり,達成状況と実施状況の傾向が把握できるものを選ぶ。
  • 管理項目については,期中のそれぞれの時期における管理水準(目標値と管理限界値)を定める。また,管理項目の推移を確認する時期又は頻度,と確認する責任者を明確にしておく。

注記3 方針において数値化された目標を設定している場合は,それがそのまま管理項目になることが多い。また,方策と実施計画については,その実施段階での重要な節目を設け,節目までに実施しなければならない活動に対する進捗度合いを管理項目とすることが多い。

注記4 管理項目は,結果をチェックする結果系管理項目(管理点)と要因をチェックする要因系管理項目(点検点又は点検項目)との区別に留意するのがよい。上位の職位は,主に目標の達成状況を表す結果系管理項目を用いて管理し,下位の職位は,方策と実施計画の実施状況を表す要因系管理項目を用いて管理することが多い。

注記5 管理項目は,方針管理と日常管理で用いられるが,両者の管理水準の性格は異なる。

方針管理の管理項目は,部門の方針と実施計画と密接に関連し,その達成状況と傾向を適時に判断できることが必要である。方針管理の管理水準(目標値と管理限界値)は,重点課題の解決に望ましい現状打破の挑戦的な水準を設定し,多くの場合はよいプロセスへの改善を狙っている。このため,それぞれの時期における管理水準は,実施計画で定められた実施事項と整合するよう,最終の目標値に到達するように変えるのがよい。

一方,日常管理の管理項目は,部門の業務分掌と密接に関連し,業務の異常を早く確実に検出できることが必要である。日常管理の管理水準(中心値と管理限界値)における中心値は,現状で達成している水準を基に設定し,管理限界値はプロセスが安定状態かどうかを客観的に判定する値とし,安定したプロセスの維持を狙っている。このため,それぞれの時期における管理水準は,一定又は従来の延長線とするのがよい。

管理項目と管理水準は,グラフ又は表にし,実際の値を打点又は記入できるようにしておくのがよい。また,それぞれの時期(月,週など)に実施すべき内容,実施した内容,管理水準を外れた場合の原因追究の結果,これに基づいてとった処置などを記入できるような欄を設けた管理帳票を用意しておくのがよい。これによって,方針と実施計画の達成状況と実施状況が関係者にとって分かりやすいものになり,タイムリーにPDCAサイクルを回せるようになる。

注記6 目標線と管理限界値を記入した推移グラフは,「管理グラフ」と呼ぶことがある。

注記7 管理限界は,「処置限界」と呼ぶことがある。

方針の実施とその管理 [5.3]

実施計画に基づく実施 [5.3.1]

部門を統括する管理者は,実施計画で定めた実施事項に関して,実施計画の担当者,責任者,上位管理者と関係者と連携し,月単位などの設定した期間でPDCAサイクルを回して方針達成のための活動を進める。

実施状況の確認 [5.3.2]

部門を統括する管理者は,方針を理解し,所期の計画どおりに目標を達成するように努める。そのために,実施計画の進捗を定められた頻度で確認し,最終目標を達成する上で異常はないかどうかを確認する。

確認に当たっては,次の事項を行うのがよい。

  • 自分が責任をもっている管理項目について,管理水準(目標値と管理限界値)を記入した推移グラフなどを用いて,実績と目標値と管理限界値とを比較し,達成状況を確認する。
  • 関連する下位の方策と実施計画について,その進捗状況を定期的に確認する。このとき,方針の浸透度合いを,現場,現物と現実で確認する。また,担当者の課題達成能力と問題解決能力が十分かどうかについても確認する。
  • 下位に対して,各人が責任をもっている管理項目が管理限界を外れたり,外れることが懸念されたりする場合には,必ず報告するように指示する。
  • 適宜,状況報告と相談を受け,部門と部門横断チーム全体の関係者が連携し,協力して目標を達成するように全体の進捗を管理する。

実施状況確認結果に対する処置 [5.3.3]

部門を統括する管理者は,方針と実施計画の管理項目が管理限界値から外れたり,外れることが懸念されたりする場合,次の事項を行うのがよい。

  • 原因を究明する。その上で,その時点までの差異と遅れをばん(挽)回するための処置をとる。
  • 必要に応じて,上位管理者又は関係者に必要資源の投入などの支援を要請する。
  • 方針管理の運営管理の側面での原因(実施計画を作っていない,資源の割当てをしていない,方針と実施計画が関係者に伝わっていない,担当者に対する必要な教育と訓練が不足している,管理項目と管理水準が不適切であるなど)について,再発防止を行う。
  • 当初の方策と実施計画では目標の達成が困難であることが判明し,新たな方策と実施計画が必要な場合,また,5.3.4に該当するような場合,方策と実施計画の変更を考慮する。

変化点管理(内的要因と外的要因の変化への対応) [5.3.4]

組織が方針管理で対象とする期間は,半年間又は1年間が一般的である。この期間に,次の変化に対応して,当初の方針,方策と実施計画を変更する必要が生じることが考えられる。

  • 上位の方針が変わる,合併などで組織が変わる,経営資源の確保に支障が出る,想定していなかった問題と固有技術的な課題が発生するなどの内的要因の変化
  • 為替レートの大幅な変動,競合状況の変化,顧客と社会のニーズと期待の変化,供給者,パートナなどの変更,地震,台風などの自然災害などの外的要因の変化

部門を統括する管理者は,このような兆候を感度良く把握するとともに,その影響を評価し,部門の方針の達成に可能な限り影響しないように,方策と実施計画を変更するのがよい。また,部門の方針を変更することが必要な場合には,そのことを上位管理者と関係部門に速やかに伝え,方針の策定と展開と同様なプロセスで連携を図る。

期末のレビュー [5.4]

部門を統括する管理者は,部門の方針管理の状況について集約して総合的にレビューし,次期に取り組むべき課題を明確にする。レビューに当たっては,次の事項を行うのがよい。

  • 部門の方針のうち,下位に展開したものについて,期末の報告書を基にレビューする。
  • 部門の方針について,目標と実績との差異を分析する。
  • 目標の達成状況と方策と実施計画の実施状況との対応関係に基づいて,部門の方針管理の運営について見直す。
  • 部門の期末のレビューの結果を報告書にまとめて,上位管理者によるレビューを受ける。

下位に展開した方針についてのレビュー [5.4.1]

部門を統括する管理者は,下位に展開した方針の達成状況と実施状況を下位の管理者と担当者が作成した期末の報告書に基づいてレビューをするのがよい。このとき,次の事項を考慮するのがよい。

  • 下位の管理者と担当者,並びに関連する他部門とパートナが集まってレビューを行うための場を設定する。
  • 5.2.3の図4に示したような方針の展開の構造に基づき,部門の重点課題ごとに報告と議論を行う。
  • 下位の管理者と担当者が認識している今後取り組むべき課題を聞く。
  • 方針の達成状況と実施状況に加え,方針管理の運営状況についても確認する。
  • 自分の指示と支援,並びに経営資源の提供が適切だったかどうかを確認する。
  • 報告内容について不明な事項が生じた場合には,現場で,現物を,現実に確認する。

個別の方針ごとの目標と実績との差異分析と原因分析 [5.4.2]

部門を統括する管理者は,方針として取り上げた目標と達成した実績との差異分析を行い,当該の方針に関わる領域において,次期の方針で取り組むべき課題を抽出するのがよい。差異分析に当たっては,次の事項を考慮するのがよい。

  • 目標と実績とを時系列で比較する。また,平均だけでなく,データのばらつきに着目して分析する。
  • 目標と実績との差異を層別とパレート分析し,差異を生じさせた重要な要因を見極める。
  • 目標の実績と方策と実施計画の実施状況との対応関係,並びに目標と実績との差異を方針の展開の構造に基づいて分析し,目標に対する方策の寄与の度合いを明確にする。
  • 方策と実施計画に掲げながら実施できなかったことについて,実施できなかった理由を「なぜなぜ」を繰り返して追究し,業務プロセスにおける原因を明確にする。
  • 競合他組織の実状を調査と分析し,自組織の実績と比較する。

注記 分析のための技法は,JIS Q 9024を参照することができる。

方針管理の面からの分析(目標の達成状況と方策と実施計画の実施状況との対応関係の分析) [5.4.3]

部門を統括する管理者は,各々の重点課題に対して,当期の目標を達成したかどうか,対応する方策と実施計画が計画どおり実施されたかどうかを組合せで評価するのがよい。評価結果に基づいて,表2に示す四つのタイプ(タイプA~タイプD)のいずれであるかを判定する。

表2-方針の達成状況と実施状況のタイプ
目標方策と実施計画
タイプA ○(達成) ○(実施)
タイプB ○(達成) ×(未実施)
タイプC ×(未達成) ○(実施)
タイプD ×(未達成) ×(未実施)

表2のそれぞれのタイプについて,次の事項を考慮して,分析を実施する。

  • a) タイプA:方策と実施計画を計画どおり実施し,目標も達成したタイプである。成功要因を分析するのがよい。目標を達成するために取り上げた方策と実施計画のうち,目標の達成に大きく寄与したものは何か,方策と実施計画が計画どおり実施できたポイントは何かを明らかにする。
  • b) タイプB:方策と実施計画を計画どおり実施しなかったにもかかわらず,目標を達成したタイプである。策定した方策と実施計画以外の要因で目標を達成したのであるから,結果よければ全てよしとはせずに,方針策定時点で考慮し損なった要因とその目標への寄与の度合いを把握する。例えば,考慮し損なった要因としては,経営環境の変化,為替変動のような外的要因などが考えられる。方針策定段階でこれらをなぜ考慮し損なったのかを追究する。また,なぜ方策と実施計画が計画どおり実施できなかったのか又はしなかったかの要因を追究する。
  • c) タイプC:タイプBとは反対に,方策と実施計画は計画どおり実施したが,目標が未達成なタイプである。方策と実施計画は計画どおり実施したのであるから,目標達成のための方策と実施計画が見当違いであったのか,寄与の度合いが予想より小さかったのかなどを明らかにする。目標が未達成の理由を外的要因又は他部門の責任に帰することは避け,自責要因の部分に着目することを基本とする。
  • d) タイプD:タイプAとは反対に,方策と実施計画を計画どおり実施せず,目標も未達成だったタイプである。方策と実施計画を計画どおり実施できなかった又はしなかった原因を追究する。

部門を統括する管理者は,上記の判定と分析の結果を部門として総合的に分析し(分布,推移など),自部門における方針管理のプロセスについてレビューする。レビューに当たっては,次の点に着目するのがよい。

  • 上位の方針,自部門の中期計画,前期のレビュー,経営環境の分析などを踏まえて,重点課題を絞り込んだか,明確な目標を設定したか。
  • 自部門の特徴と組織能力を十分に考慮して目標を設定したか。
  • 目標を達成するための方策が,目標と方策との関係を正しく考慮したものであったか,具体的であったか。
  • 方策の実施に当たって,完了予定日,役割分担などを明確にした実施計画を定めていたか。
  • 目標の達成状況,並びに方策と実施計画の実施状況を正しく評価できる管理項目を定めたか。途中の確認と処置を確実に行ったか。
  • 必要な経営資源が適時かつ適切に充当できたか。
  • 関連する部門との連携はよかったか。

分析結果に基づく処置の検討 [5.4.4]

部門を統括する管理者は,目標と実績との差異分析,と目標の達成状況と方策と実施計画の実施状況との対応関係の分析に基づき,次の視点からとるべき処置を検討するのがよい。

  • a) 次期以降の部門の方針と中期計画に,分析の結果から必要と考えられる事項を反映する。
  • 引き続き取り組む必要のある方針は,次期の方針の重点課題の候補とする。
  • 中期計画は,期ごとに更新する場合,又は計画開始年度から完了年度まで計画を継続する場合のいずれの方式でも,関連する方針の分析結果に基づいて見直し,必要があれば更新する。
  • b) 自部門が担当している技術と管理に関して改善すべき事項は,固有技術と管理技術の側面から再発防止の処置をとる。例えば,技術標準の制定と改訂,デザインレビューの仕組みとプロセスの見直しなど。
  • c) 品質保証,原価管理,納期管理,安全管理,人事管理などの組織全体のマネジメントシステムに関して改善すべき事項は,トップマネジメントによる期末のレビューの機会などに当該事項を主管する部門へ提案する。例えば,品質保証体系,原価管理体系などの仕組みに関わる改善事項など。
  • d) 所期の目的を達成して次期への課題にならなかった方針(重点課題,目標と方策)は標準化を行い,次項を考慮して日常管理へ移行する。
  • 目標の達成状況を評価した管理項目が,日常管理の管理項目でなかった場合は,日常管理の管理項目として追加し,達成した実績値を基に管理水準を定める。また,日常管理の管理項目であった場合は,従来の管理水準を達成した実績値を基に改訂する。
  • 目標の達成に有効だった方策は,業務プロセスに反映し,プロセスフローチャート,作業標準,技術標準などの関係標準の制定と改訂を行うとともに,その教育と訓練を行い,日常業務で確実に遂行できるようにする。
  • e) 自部門の方針管理のプロセスに関して改善すべき事項(5.4.3の分析に基づいて明らかになった事項)は,次期のプロセスに反映する。

レビュー報告書をまとめ,上位管理者のレビューを受ける [5.4.5]

部門を統括する管理者は,当期の重点課題ごとに期末のレビューの結果を整理した報告書を作成し,次期への課題を明確にするのがよい。期末のレビュー報告書の様式の例を図D.4に示す。

上位管理者による期末のレビューへのインプットとして,期末のレビュー報告書と実務で使用している帳票を用いて,方針管理の重点課題,目標と方策に関する計画と実績との差異分析結果を報告するとともに,次期への課題提案などを行う。

上位管理者による期末のレビューにおける指摘事項については,次期の方針と活動に反映させる。

管理者の心構え [5.5]

管理者としてもつべき認識 [5.5.1]

部門を統括する管理者は,次のような認識をもつのがよい。

  • 統括している部門の方針管理を実施する全責任を負っている。また,部門の方針の達成なくして,組織全体の方針は達成できない。関係する上下左右の職位と職場との調整,各種予想されるリスクの事前回避などの全てにわたって配慮する必要がある。
  • 経営資源は与えられるものではなく,方針の必達に向けての必要な要件を自分の努力で獲得していくことが管理者の役割である。なお,人的資源はすぐに獲得するのが難しいことが多いため,中長期的な視点に立って教育と訓練を始めることも必要である。
  • 組織にとって必要な自部門の方針を上位に提案することが重要である。そのためには,a) 自部門の現状を客観的に把握した上で,b) 将来の究極的なありたい姿,c) 半年先,1年先,2年先などの有期限での目指す姿,並びにa)~c) と組織の目的と目標との関わりを日頃から熟慮していることが必要となる。これらの事項を上位に提案して上位の方針に反映する活動が組織全体の活性化につながり,当該組織の方針の達成確率向上にもつながっていく。
  • 方針を部下(下位の管理者と担当者)に割り当てて,管理者として管理側面に徹するだけが管理者の役割ではない。緊急度と難易度が最も高い課題を管理者自身が中心となって担い,所期の目標を達成していくことによって,自分の力量アップとなるばかりでなく,部下の育成の場となり,リーダーシップを発揮しやすい環境作りにもつながる。

管理者としての部下への対応 [5.5.2]

効果的かつ効率的な組織運営のためには,部下一人一人が最大限に能力発揮することができるような配慮と環境整備が重要となる。部門を統括する管理者は,方針の策定に当たって,部下の意見と提案を求めていることを明示し,十分に引き出せるような機会と時間をとり,部下が進言しやすい場作りを心掛けるのがよい。また,方針の展開に当たって次の事項に配慮するのがよい。これらによって,部下のモチベーションの向上につながり,結果として方針の達成にもつながる。

  • 方策と実施計画の担当を決める際に,部下一人一人の特性と希望を十分に考慮し,それらに応じた割当てを行う。
  • 日頃から,部下一人一人が自分の強みをいかせるように,各自がどの領域でどのような価値を発揮していくかというキャリアプランの作成を支援する。
  • 方策と実施計画を割り当てるときには,部下に単に内容だけを指示するのでなく,「なぜこの方策と実施計画が部門にとって重要なのか」,「なぜこの方策と実施計画をあなたに割り当てることに決めたのか」,「それによって,あなた自身のキャリアプランのどの部分がどのように伸びると思っているか」を説明し,理解できていることを確認する。
  • その上で,部下一人一人を組織の構成員としてなくてはならない価値ある存在として見ていることを明確に伝える。

部門を統括する管理者は,全て自分で行う,又は信頼できる人を集めて行うという考え方に固執せず,部下に重要な方策と実施計画を任せるのがよい。スピードが要求される現在の組織運営では,実務を行いながら教育と訓練し,OJT(日常業務の中での従業員教育)でやらせてみながら壁を乗り越えさせることが現実的であり,この動きが組織力向上へつながる。その上で,最後は自分が全て責任をとるという強い意識と姿勢をもって,部下に任せても要所要所で成功に導くようにフォローしていくことが,管理者の重要な役割である。

部門を統括する管理者は,環境の整備に関して次の事項を考慮するのがよい。

  • 様々な業務の優先順位を明確にする。
  • 外部と関連する部門から必要な情報が入手できるように,協力と支援が得られるようにする。
  • 必要な経営資源が活用できるようにする。
  • 果敢に挑戦した上で失敗することを容認する職場風土を作る。
  • 部下の取組み姿勢とプロセス,得られた成果を評価し,人事考課へ反映できるようにする。
  • 必要な知識と能力を身に付けるための教育と研修を受けられるようにする。

報告,提案と相談における管理者としての配慮 [5.5.3]

部門を統括する管理者は,上位管理者へ報告,提案と相談する場合,又は下位から報告,提案と相談を受ける場合,次の事項を考慮するのがよい。

  • 目的,並びに立場と役割を常に意識する。
  • 重点課題,目標と方策を示し,目標と実績との差異だけにとどまらず,方策と実施計画の実施状況と目標への寄与度を述べた上で,現状の問題点と期末見込みを明示する。
  • 事実とデータに基づいて行う。事実とデータは,スポット的ではなく,上昇か下降か,過去との対比などの傾向を見る。また,データは層別し,どんぶり勘定又は平均だけで見ることで内容が不明確にならないようにする。
  • 論理の一貫性と有効性を高めるために,QCストーリーを活用する。

組織全体の方針管理の進め方 [6]

トップマネジメントのリーダーシップ [6.1]

組織全体のパフォーマンスを改善するためには,組織が目指す方向についての共通の認識を形成し,その実現に向けてボトルネックとなる課題を通出し,全員の参加を得て確実に解決していくことが重要である。トップマネジメント(組織の社長,役員,事業部長など)は,このような状況を作り上げるために,方針管理が役立つことを組織に認識させ,その導入と活用を図るとともに,その実践に深く関わり,有効に機能させていくのがよい。

具体的には,次のことを行うのがよい。

  • a) 組織の使命,理念,ビジョン,経営環境などに基づいて中長期経営計画を策定する【6.2参照】。
  • b) 中長期経営計画に基づいて組織全体の期ごとの方針【組織方針)を策定する(6.3参照】。
  • c) 組織方針を組織全体に展開する【6.4参照】。
  • d) 方針の実施に必要な予算,人,インフラストラクチャなどの資源を確保する【6.4と6.5参照】。
  • e) 各部門又は部門横断チームとの直接のコミュニケーションを通じて,方針の展開と実施のプロセス,並びに方針の達成状況を診断する【6.6参照】。
  • f) 方針の達成の状況とそのプロセスを,期の途中に適宜評価するとともに,期末にレビューする【6.7参照】。
  • g) 人々が組織の方針を達成することに十分に参画できる内部環境を作り出し,維持する。
  • h) 方針管理を推進するための組織化を行う。組織の規模が大きく,機能又は部門の数が多い場合は,方針管理に関する仕組みを構築し,必要な教育を行い,進捗状況をトップマネジメントに報告する推進部門を設置又は任命する。

中長期経営計画の策定 [6.2]

方針管理の進め方は,箇条5にも記載したように,期ごとに,組織方針を策定し,これを組織全体に展開して実施し,期末にレビューを行って次期の組織方針に反映することが基本である。ただし,これだけでは,経営環境の変化に伴って期によって方針が大きく変わる可能性があるため,技術開発,人材育成,新事業開拓など,成果が数年後に出るような活動については適切な方向付けが難しくなる。このため,組織は,中長期経営計画を策定し,これを基に期ごとの組織方針を策定するのがよい。

中長期経営計画とは,組織によって正式に策定された,事業を将来的にどう進めるかに関する計画であり,顧客に対してどのような価値を提供するのか,それをどのような方法で実現するのかに関する戦略である。通常,中期は3~5年,長期は5~10年を意図している場合が多い。内容としては,次の項目を含めるのがよい。

  • 対象とする顧客,並びにそのニーズと期待
  • 提供する製品とサービス,並びにこれらを通して顧客に提供する価値
  • 製品とサービスを提供する方法とタイミング
  • 競合する他の組織をりょうが(凌駕)する方策
  • 人,インフラストラクチャ,作業環境,情報,供給者とパートナ,天然資源,財務資源などの必要資源
  • バリューチェーン(顧客に価値を提供するプロセス)を構成する各機能(技術開発,生産,物流,販売など)に対する方向付け,と機能の実現において鍵となる基盤(人材育成,情報通信技術など)に対する方向付け

中長期経営計画の策定に当たっては,次の手順に沿って進めるのがよい。

  • a) 組織の使命,理念とビジョンを確認する。
  • b) 市場,顧客,社会動向など組織を取り巻く外部環境の変化を分析する。顧客視点でニーズと期待の変化を把握するとともに,社会における関連固有技術と情報通信技術の進展の方向を確認する。それを基に,組織の使命,理念とビジョンを達成する上での機会とリスクを明らかにする。
  • c) 組織の経営資源(技術,人材,財務など)の実態,特に今までの中長期経営計画の達成と実施状況に基づく反省点を明らかにし,競合する他の組織と比較して強みと弱みを把握する。
  • d) 環境が変化する中で,不確実性の高い要因がある場合には,複数の起こり得るシナリオを描く。
  • e) 複数のシナリオに対し,競合分析,リスク分析などを行い,どのシナリオが起こってもリスクを回避できる方向を検討する。
  • f) 資源配分を考慮して,ビジョンを達成する計画を決定する(将来のありたい姿の実現を目指す。)。

なお,組織による中長期経営計画の策定に伴い,技術開発,人材育成,新事業開拓,情報システムなど,結果が出るまでに数箇年を要する活動を担当する部門は,各部門の中期計画を立案し,トップマネジメントへ提言を行い,すり合わせを行うのがよい【5.1参照】。

策定した中長期経営計画については,時期を決めて見直しを行うのがよい。見直しの方法としては,計画開始年度から完了年度まで計画を固定して完了年度に次の期間の計画を定める方式,長期の計画を策定した上で期ごとに見直すローリング方式(変化の激しい場合に有効である。)などがある。

注記 中長期経営計画の策定を効果的かつ効率的に進めるための手法には,マクロ分析,業界構造分析,プロダクトポートフォリオ分析,市場分析,バランストスコアカード(BSC),ベンチマーキング,SWOT分析,シナリオプランニング,戦略要因分析などがある。

組織方針の策定 [6.3]

組織は,次の事項を考慮し,組織全体として目指す方向をより具体化した組織方針を期ごとに策定するのがよい。これによって,中長期経営計画の達成に向けた着実な取組みと経営環境の変化への迅速な対応が可能となる。

  • 中長期経営計画の中で当期に実施すべき項目
  • 組織が置かれている経営環境の分析において特定された機会とリスク(顧客のニーズと期待の変化など),並びに組織能力の分析又は競合する他の組織との能力比較において明らかとなった組織の強みと弱み(技術,人材,財務などの強みと弱み)。
  • 前の期において,目標未達となった重点課題,並びに期末のレビューと過去数年間の実績の分析によって明らかになった組織の課題。

組織方針の策定に当たっては,その内容をより具体的なものにするために,重点課題,目標と方策の三つを明確にする。重点課題,目標と方策をセットで示すことで,組織として目指す方向が明確となる。

  • 重点課題を多く挙げすぎると,方針の達成が困難となる。従来の延長線上で達成できるものは除き,大幅な改善と革新を狙うものだけに絞り込む【5.2参照】。従来の水準を維持する項目を合わせて示すことは,方針管理の位置付けを曖昧にするために好ましくない。どうしても一緒に示したい場合には,重点課題がどれかが分かるよう印を付けるなどの工夫を行う。
  • 目標については,顧客のニーズと期待,事業分野【製品とサービスの種類),競合他組織などの時間的変化を把握した上で,策定した中長期経営計画から必要とされる期の水準を,確実に達成できるように設定する(5.2参照】。また,達成できたかどうかが客観的に判断できることが大切である。
  • 方策については,詳細な方策を指示するのでなく,下位が方策を検討するための方向性を示すものにとどめる【5.2参照】。これによって,組織全体に方針を展開する過程において,様々な方策を検討する自由度が生まれる。これは最上位の方針である組織方針では特に重要である。

組織方針の策定は,組織方針の展開が期の開始前に終了するよう,今期の事業見込みの予想と来期の事業計画の立案に伴って開始するのがよい(例えば,期の開始の2~3か月前から)。

策定した組織方針については,説明会,説明資料,ビデオなどを活用して,トップマネジメント自ら説明し,組織の全員に周知するのがよい。このとき,方針の意図,方針と各人が担当する業務とのつながりが明確に理解できるようにするのがよい。

組織方針の展開 [6.4]

組織方針は,組織内部の各部門,外部の関係組織などに展開することによって具体的な改善と革新の計画となる。組織は,組織方針の展開に当たり,次のことを確実にするのがよい。

  • 上位者が方針の意図を関連する下位者を集めて十分説明し,下位者が方針とその意図,並びに達成に向けた自分の役割を理解し,目標を達成するための具体的な方策についてのアイデアを出し合い,相互に連携を図ることのできる場を設ける。
  • 方針に最も寄与の大きい部門が,必要に応じて他部門又は関係する他組織の協力を要請しながら,重点的に活動に取り組む。ただし,一つの部門では解決が困難な場合,又は目標と方策との因果関係若しくは方策が明確でない場合には,関係する部門と組織で部門横断チームを結成する。このチームは,目標達成に関する様々な情報を分析し,方策を立案し,実施する【5.2参照】。
  • 結果として得られた方針の展開が,各階層の上位と下位で,目標と方策との因果関係に基づいて密接につながっているとともに,下位になるに従って,より具体的になっている。また,各階層の重点課題の数は3~5項目程度に重点化されている。
  • 方針の展開によって導かれた個々の活動について,具体的な実施計画が策定されている。また,策定された計画がそのとおり実施されているかどうか,結果として目標が達成されたかどうかを評価し,問題がある場合には遅滞なく処置をとれるよう,管理項目と管理水準が設定され,これらを用いた進捗状況の確認の場が計画されている【5.2参照】。
  • 実施に必要な資源(人,インフラストラクチャ,作業環境,情報,供給者とパートナ,天然資源,財務資源,固有技術,マネジメントシステムなど)について,必要な時期までに準備できるよう計画されている。

組織は,上記のような方針の展開が,組織の第一線まで行われているかどうかを確認するために,方針の展開に関わる帳票などを整理し,系統図,マトリックス図などを用いてつながりを可視化するのがよい。これらの資料を基に,トップマネジメントが,直接各部門から当該部門における方針の展開の状況と結果をヒアリングするのも有効である。

方針の実施とその管理 [6.5]

方針の展開によって導かれた実施計画を組織全体として確実に実施することで,事業又は業務プロセスの改善と革新が進む。また,設定した管理項目をチェックし,管理水準から外れている場合に迅速な処置をとることで,新たな知見の獲得と環境変化に応じた柔軟な対応ができる。このため,組織は,展開された組織方針の実施に当たり,次の事項が確実にできるようにするのがよい。

  • 担当者が実施計画に沿って着実に改善と革新の活動を行っている。各部門を統括する管理者,他部門と他組織からの支援と協力が適切に得られている。
  • 管理項目に基づいて実施計画の進捗,と目標の達成状況を定期的に確認し,管理水準を外れた場合には,その原因が追究され,必要な見直しが行われ,実施計画に織り込まれている【5.3参照】。
  • 経営環境の変化などによって,実施計画どおりの実施若しくは目標の達成が困難な場合,又は目標を上回る大幅な達成が予想される場合には,必要な責任と権限をもつ上位管理者への報告を行い,組織方針の展開に関する見直しが行われている。
  • 上位者が,下位者の方針管理の実施状況を把握と評価し,必要な指導を行っている。

トップマネジメントによる診断 [6.6]

トップマネジメントは,組織の人々に方針を浸透させ,参画意識をもたせるために,各部門における方針の展開状況と実施状況の診断を行うのがよい。この診断は,現場,現物と現実による診断を通じて,トップマネジメントが,各部門の課題と問題,方針達成のためのプロセス,並びに方針の達成状況を把握するためにも有効である。

トップマネジメントによる診断は,次の手順で実施するのがよい。

  • a) 目的に応じて,期の適切な時点で,各部門又は部門横断チームに対して診断を実施するよう計画する。
  • b) 診断者は,対象部門又は部門横断チームの診断に必要な組織のトップマネジメント数名で構成する。被診断者は,対象部門と部門横断チームの責任者,並びにその部門又は部門横断チームの管理者と担当者で構成する。
  • c) 被診断者である部門又は部門横断チームの責任者は,トップマネジメントに対して,組織方針に沿った部門又は部門横断チームにおける,方針の展開とその実施状況を説明する。その後,トップマネジメントは,実施状況を現場,現物と現実で確認する。
  • d) トップマネジメントは,診断の結果から,組織方針の浸透度合いを把握するとともに,部門又は部門横断チームの管理能力と問題解決能力を評価する。また,部門又は部門横断チームの課題と問題を把握し,トップマネジメントの立場から指摘と助言を行う。
  • e) 部門又は部門横断チームは,診断で明らかとなった課題と問題について,改善を実施するとともに,必要に応じて報告を行う。

トップマネジメントは,組織方針の策定と展開の前提としていた経営環境に常に注意を払い,大きく変わったと判断した場合には,遅滞なく組織方針とその展開を見直し,組織が経営環境の変化に対してすばやく対応できるようにリーダーシップを発揮するのがよい。

注記 トップマネジメントによる診断は,方針管理だけでなく,日常管理の実施状況,人材の育成状況,従業員の意欲などの実態を的確に把握する上で有効である。

期末のレビュー [6.7]

組織は,期末には,組織方針とその展開に基づく各部門又は部門横断チームの実施計画の実施状況と方針の達成状況を集約し,次期の組織方針の策定と展開に反映させるのがよい。これによって,実施結果を踏まえて期単位でPDCAサイクルを回すことが可能となる。組織は,期末のレビューを行うに当たって,次のことを確実にするのがよい。

  • 各部門又は部門横断チームにおいて実施計画の実施状況と目標の達成状況の評価を行い,予定どおり実施できなかったもの,定められた期日までに目標値を達成できなかったものを明らかにする。また,目標の達成状況と関連する方策と実施計画の実施状況とを対応付けて評価する【5.4参照】。
  • 達成できなかったものと実施できなかったものについて,事実とデータに基づいて,関連する事業又は業務プロセスの観点からの原因の追究を行い,次期以降に取り組むべき課題を明確にする【5.4参照】。
  • 目標の達成状況と関連する方策と実施計画の実施状況とを対比し,方針の展開並びに方針の実施とその管理の視点からの原因追究を行い,次期以降の方針管理において改善すべき点を明確にする。

組織全体の方針管理に責任をもつ人は,表2の判断基準に基づく図5のような資料を用い,方針管理の展開並びに方針管理の実施とその管理の実態を把握するのがよい。組織全体として,タイプA~タイプDのどれが多いかを明らかにすることで,方針の展開並びに方針の実施とその管理の方法の弱さが明らかとなる。また,部門と階層による層別を行うことで,どの部門又はどの階層の展開と実施が弱いのかを明らかにすることができる。原因追究によって明らかとなった方針の展開と実施のプロセスにおける弱さについては,その克服のための方法を検討し,次期の方針の展開と実施にいかすのがよい。例えば,タイプBとタイプCが多く,方針の展開において十分な議論が行うことができていないことが明らかになった場合には,議論の仕方に関する工夫を行う。また,タイプBとタイプDが多く,方針の実施において十分な進捗管理が行えていないことが明らかになった場合には,進捗管理の方法に関する工夫を行う。

トップマネジメントは,当期末に,各部門による期末のレビューの報告を受け,次期の組織方針の策定と中長期経営計画の見直しに反映させるべき事項を把握するのがよい。この際,単に成果だけを見るのではなく,そのための各部門の取組みのプロセスにも着目するのがよい。また,顧客の満足,その他の利害関係者(従業員,関係組織,供給者など)の満足,人材育成,関連固有技術と情報通信技術の獲得と活用,組織の社会的責任などの多面的な視点から今後取り組むべき事項を把握する機会とするのがよい。

期末のレビューは,組織の第一線から最上位に向かって順次行うのがよい。方針の策定と展開と連動して,前倒しで実施するのがよい(例えば,期の開始の2~3か月前から)。この時点では,実績がまだ出ていないが,実績見込みを予想して行うのがよい。

実施計画の実施状況

図5-目標の達成状況と方策と実施計画の実施状況とから見た方針管理の弱さの分析の例

方針管理の推進 [7]

方針管理はこれを適用しようとする組織全体で実践していく必要がある。このため,方針管理の推進について,中長期と短期の推進計画を立案し,その下でPDCAサイクルを回していくのがよい。このような方針管理の推進は,組織のトップマネジメントが率先して行う必要がある。

なお,規模が大きい組織では,推進のための実務を経営企画部門,TQM推進部門など専門の部署が担当することもある。

推進計画の立案に当たっては,方針管理の推進時期を導入期,展開期と運用期に分けて検討するのがよい。このとき,組織の特徴,実状と文化を考慮することが大切である。また,方針管理の導入期(準備を含む。),展開期と運用期によって,推進事項の重点を変えるのがよい。それぞれの期において,重点を置くべき事項を表3に示す。

方針の展開を通して明確となった課題と問題への取組みは,それに責任をもつ既存の組織が担当するのが基本となるが,課題と問題ごとに編成する部門横断チーム又は部門ごとの改善チーム,職場ごとに編成し,継続的に改善に取り組むQCサークルなどによって行われる場合もある。このため,方針管理を有効に機能させるためには,これらの小集団活動に関する仕組みも合わせて整備し,推進するのがよい。

また,方針管理の導入に当たっては,現場での日常管理の強化から始め方針管理へ進化させる場合と,トップマネジメントの指揮の下方針管理から入る場合とがあり得る。どちらがよいかは,組織の状況によって見極めるのがよい。

表3-導入期,展開期と運用期における方針管理推進の重点
推進の重点
導入期組織の構成員が方針管理の内容と意義を理解していない ・ 推進者は方針管理の仕組み,その他基本事項について十分に熟知しておく。
・ 方針管理のための規定,指針,帳票などの仕組み作りを進める。
・ 組織全体に方針管理に関する理解を浸透させるため,教育に重点を置き,成功例を作る。
展開期方針管理を実践し,成果の出た部門が幾つかある ・ 部門間における取組みのばらつき,うまくいっている部分とうまくいっていない部分が明らかになるようにする。
・ 活動の評価と結果のフィードバックに重点を置く。
・ 仕組みの弱さを顕在化させ,改善する。
運用期一通りの方針管理が各部門で実施されている ・ より長期的,戦略的かつ部門横断的な取組みを目指して,仕組みを進化させる。
・ 各部門において方針管理が確実に行われるよう,継続的教育(方針管理の意義など)に重点を置く。

方針管理の教育 [7.1]

方針管理を浸透させるためには,組織のあらゆる階層の人に方針管理に関する教育を計画的に行う必要がある。特に導入当初の段階では,方針管理の目的と意義を組織全体に周知することが必要不可欠である。また,方針管理の意義と内容は,形式と様式の中に埋もれて,いつしか忘れられていく傾向にあるため,方針管理の教育は一度行っただけでは十分とはいえず,繰り返し,継続的に行う必要がある。

各階層に対して行うとよい主な教育内容を表4に示す。当然,方針管理の教育が有効に機能するためには,方針管理の基礎となるTQMの教育が必要であり,表4にはこれらも合わせて示してある。

方針管理の教育は,集合研修だけでは十分な効果を発揮しない。それぞれの部門の業務とその直面している課題に応じたOJTと指導が必要である。上位管理者は,下位の管理者と担当者の方針管理の実施状況について把握し,指導と支援を行うのがよい。このため,上位管理者に対する教育は特に徹底するのがよい。また,各部門が他の部門が行っている方針管理の良いところを相互に学ぶための機会を工夫と設定することも有効である。

表4-方針管理に関する教育の対象者と主な内容
対象者主な教育の機会方針管理の教育内容方針管理の基礎となるTQMの教育内容
役員 役員会議 ・ 方針管理の意義
・ 方針管理におけるトップマネジメントの役割
・ トップマネジメントによる実施状況の診断における診断方法
・ TQMの原則
管理職
(部課長など)
管理者研修 ・ 方針管理の基本(意義と考え方)
・ 方針管理の進め方
・ 方針管理における管理者の役割
・ TQMの原則
・ 日常管理と小集団活動(QCサークル活動,チーム改善活動など)の仕組みと実践と指導方法
・ 改善の手順(問題解決法,課題達成法)
一般職 階層別研修 (5年次,10年次など) ・ 方針管理の基本(意義と考え方)
・ 方針管理の進め方
・ 方針管理と小集団活動(QCサークル活動,チーム改善活動など)との関係
・ 改善の手順(問題解決法,課題達成法)
・ QC七つ道具などのQC手法
・ 日常管理と小集団活動(QCサークル活動,チーム改善活動など)の実践方法
新入社員 新入社員研修 (集合教育) ・ 課題と問題を明確にする方法
・ 課題と問題に取り組む方法
・ QC的ものの見方と考え方
・ 改善と管理の進め方
注記 上位の対象者は,下位の対象者の教育内容を理解しておくのがよい。

方針管理のための標準,帳票とツールの整備 [7.2]

方針管理は,部門間の連携が重要となるため,それぞれの部門が別々のやり方で実施するのは好ましくない。このため,方針管理の進め方を規定,指針などに定めて展開するのがよい。この規定と指針は,箇条5~箇条7の内容を基に作成するのがよい。

方針管理を効率的に進めるには,適切な帳票を定めて活用するのがよい。必要となる帳票としては次に示すものがある。

  • 方針書
  • 実施計画書
  • 実施状況確認書
  • 期末のレビュー報告書

附属書Dに典型的に用いられるこれらの帳票の例を示す。

なお,規定と指針並びに帳票を整えることは,一定の方法を浸透させる上では役立つ反面,どうしても形式だけをまねる傾向に陥りやすいので注意が必要である。方針管理に関する教育を適切に行い,何のためにそうするのかということを教育し,理解と納得してもらうのがよい。

方針管理に関する実施計画の進捗状況と管理項目の推移状況を確認し,計画どおりに進んでいない場合と管理水準を外れている場合,組織全体に共通する原因を追究したりするためには,様々な情報を横断的に見る必要がある。このため,情報システムを整備し,上記の帳票類とそれに関するデータ全体が,これらの上で一括管理できるようにしておくのがよい。

方針管理の評価 [7.3]

組織全体と各部門における方針管理レベルを向上させるためには,方針管理の実施状況について定期的かつ体系的な評価を行うのがよい。

評価に当たっては,方針管理による成果(方針が達成できているかどうか。)だけでなく,その成果を出すための活動状況(プロセス)との対応関係も併せて評価するのがよい。また,人によって評価がばらつかないように,評価基準を明確にするのがよい。附属書Eに評価基準の例を示す。この表の評価項目は,箇条5の各項に対応している。また,レベルは5段階で設定しており,考え方と仕組みがない状況から,良い工夫がされており,大いに役立っている状況までをカバーしている。各々の評価項目についてどのレベルにあるのかをチェックすることによって,どのような点が遅れているのか進んでいるのかが客観的に評価できる。また,部門ごとに適用し,部門間の差異を比較することで実態をより詳細に把握できる。

評価は,自己評価が基本である。評価を行う場合には,帳票,実際の実施状況などの事実を確認し,その結果に基づいて判断する。自己評価による偏りを防止するため,複数人による評価を行うのがよい。また,各々の評価項目に重みを付けて点数化し,方針管理のプロセスごとの評価点をレーダーチャートに表すことでどこに問題があるかを把握できる。このような評価を行うことで,それぞれの部門が自組織の方針管理レベルを自覚し,改善目標を設定できる。さらに,これに方針管理推進部門などの第三者による評価を組み合わせることによって,より客観性を増すことができる。

評価結果については,年度による進捗具合と部門間の相違をまとめ,それぞれの部門の強みと弱みを把握し,今後の支援策など方針管理レベルを向上させるためのデータとして活用する。また,組織全体の集計結果についても,その傾向を評価し,今後の推進計画に反映する。

上記のような評価基準を用いた自己評価に加えて,外部専門家による診断と審査を受けることも有効である。これによって,自分たちでは気が付かなかった不十分な点を明らかにすることができるとともに,今後の改善に向けたヒントを得ることができる。

部門と個人の評価とのリンク [7.4]

方針管理が事業又は業務プロセスの改善と革新を促進するものであること,その成否によって中長期経営計画の達成が左右されることを考えると,方針管理の実施状況の評価と方針管理を通して達成された成果を部門と個人の評価に反映するのは自然である。この点は,従来必ずしも明確にされてこなかったが,グローバル化が進み,働き方が多様化している時代においては,方針管理と部門と個人の評価との関係を明確にしておくのがよい。

ただし,評価に当たっては,短期的な評価と結果だけの評価では問題が生じるため,期間をどう設定するか,プロセス系の評価をどのように行うか,目標値の妥当性と部門間の比較を行うための評価をどうするのかといったことを考慮するのがよい。

用語・記号、通則、マネジメントシステム、抜取検査、管理図、統計的方法、品質工学、その他

附属書A (参考)総合的品質管理における方針管理の役割と位置付け

総合的品質管理において中核となる活動 [A.1]

TQMとは,顧客と社会のニーズを満たす製品とサービスの提供並びに働く人々の満足を通した組織の長期的な成功を目的とし,プロセスとシステムの維持向上,改善と革新を,全部門と全階層の参加を得て行うことで,経営環境の変化に適した効果的かつ効率的な組織運営を実現する活動である。

TQMの中で中核となる活動は,プロセスとシステムの維持向上,改善と革新である【図A.1参照】。これらの説明を,次に示す。

  • 維持向上(狭い意味の管理) 目標を現状又はその延長線上に設定し,目標からずれないように,ずれた場合にはすぐに元に戻せるように,更には現状よりも良い結果が得られるようにする活動である。
  • 改善 目標を現状より高い水準に設定して,問題又は課題を特定し,問題解決又は課題達成を繰り返す活動である。
  • 革新 維持向上と改善が組織の内部におけるプロセスとシステムの運用並びに学習を通したノウハウの向上に基づいているのに対し,組織の外部と組織内の他部門で生み出された新たなノウハウの導入と活用などによるプロセスとシステムの不連続な変更である。

なお,上記の維持向上と改善をまとめて広い意味で「改善」という場合がある。

維持向上,改善と革新はバランスよく行うことが大切である。維持向上だけを行ってもプロセスとシステムがもつ潜在能力を引き出すことができない。また,マンネリ化が進み,プロセスとシステムに対する関心が薄れ,次第にレベルが下がってくる。他方,改善と革新だけを行っても成果を継続できない。また,そのことによって改善と革新への意欲が薄れ,良い成果が得られなくなる。改善と革新をとおして得られた業務に関するノウハウが維持向上のインプットとなり,活用されること,逆に,維持向上では解決が難しい課題と問題が改善と革新へのインプットとなることが大切である。

改善維持向上革新改善維持向上維持向上時間パフォーマンス(プロセスとシステムの成果と能力)

改善と革新の関係

図A.1-維持向上,改善と革新の関係

維持向上,改善と革新の組織的推進 [A.2]

全部門と全階層の参加を得て維持向上,改善と革新を絶え間なく実践するためには,更に,これらを顧客と社会のニーズを満たす製品とサービスの提供と,働く人々の満足につなげるためには,次の事項に組織的に取り組むことが必要である【図A.2参照】。

  • 品質保証 品質保証は,顧客と社会のニーズを満たすことを確実にし,確認し,実証するために,組織が行う体系的活動である。検査,クレーム処理,外部監査の対応などと誤解されている場合があるが,より広い意味をもつ。狙いとする製品とサービスを効果的かつ効率的に生み出せるプロセスを確立するための「プロセス保証」,顧客のニーズに合った新製品と新サービスの開発を効果的かつ効率的に行うための「新製品開発管理」が含まれる。品質保証が適切に行われるためには,そのベースとして,維持向上,改善と革新が活発に行われることが必要である。
  • 日常管理 日常管理は,組織のそれぞれの部門において,日常的に実施されなければならない分掌業務について,その業務目的を効率的に達成するために必要な全ての活動である。維持向上を実践するためには,業務とそれを行うプロセス,並びに業務の出来栄えに影響する要因とそれらを一定に保つ方法を明確にし,確実に行うことのできるようにする必要がある。また,出来栄えを測定する方法を考え,通常と異なる結果が得られた場合には,確実な原因追究と対策を実施することが必要である。
  • 方針管理 方針管理は,方針を,全部門と全階層の参画の下で,ベクトルを合わせて重点指向で達成していく活動である。組織の目標を達成する上で,維持向上だけでは足りない部分について,改善と革新を実践するためには,顧客のニーズと経営環境の変化に対応するための戦略と目標を立て,その達成に向けて重点課題,目標と方策を展開し,計画,実施,チェックと処置のサイクルを継続的に回す必要がある。
  • 小集団活動(小集団改善活動) 小集団活動は,方針管理と日常管理を通じて明らかとなった様々な課題と問題について,コミュニケーションが図りやすい少人数によるチームを構成した上で,特定の課題と問題についてスピードのある取組みを行い,その中で各人の能力向上と自己実現,並びに信頼関係の醸成を図るための活動である。部門横断チーム,部門ごとのプロジェクト活動,第一線の従業員によるQCサークル活動などが含まれる。
  • 品質管理教育 品質管理教育は,顧客と社会のニーズを満たす製品とサービスを効果的かつ効率的に達成する上で必要な価値観,知識と技能を組織の構成員が身に付けるための,体系的な人材育成の活動である。維持向上,改善と革新が活発に行われるための前提として重要であり,階層別・分野別教育体系を確立すること,実践教育の場を設けること,必要な能力の目標を設定し,計画的な育成を図ることなどが含まれる。
方針管理

図A.2-維持向上,改善と革新の実践における方針管理の役割と位置付け

附属書B (参考)方針管理の基本的考え方

方針管理の目的と範囲 [B.1]

事業目的を達成するためには,従来の延長にない取組みが必要な場合が多い。これらの取組みを多数の人で構成する組織において効果的かつ効率的に行うための活動が方針管理である。

事業計画,日常管理と方針管理は密接に関係するため,混同される場合が多い。ここでいう「事業計画」とは,事業目的を達成するために組織として行うべき活動に関する全ての計画であり,中長期経営計画,それを達成するための事業戦略,年度事業計画,各部門がそれぞれの日常の業務を行うための実行計画なども含まれる。組織においては,事業計画に関する計画【Plan),実施(Do),チェック(Check)と処置(Act)を確実に回すことが必要となる。事業計画,日常管理と方針管理の三つの関係については,事業計画を実現するための活動が日常管理と方針管理であると考えるのがよい(図B.1参照】。

日常管理

図B.1-事業計画と日常管理と方針管理との関係

上位の事業計画において目標が定まった場合,その達成のためには,次の二つが必要である。

  • a) 既に実現できている部分を確実に担保する活動(維持向上)
  • b) 不足している部分について新たに取り組む活動(改善と革新)
  • a) に対応するのが「日常管理」であり,b) の活動,すなわち日常管理だけでは足りない部分について,取り組むべき課題と問題を目的指向と重点指向の原則に沿って明らかにし,達成と解決するために行う活動に対応するのが「方針管理」である【図B.2参照】。

経営環境の変化に対応するためには,既存のプロセスを改善と革新する必要がある。しかし,プロセスを変えると,大きな効果が期待できる反面,予想外の失敗とトラブルが発生するリスクも高くなる。このようなリスクを抑え込むためには,方針管理の中で事前の十分な検討と対策を行うとともに,日常管理として標準化,異常の検出と処置などを徹底することが大切である。

日常管理と方針管理との割合は,部門によって,同じ部門でも関連する事業の状況とTQMの発展段階から見た時期によって変わるのが普通である。ただし,日常管理が大半の領域をカバーし,それでカバーしきれない部分を重点的に扱っているのが方針管理となることが多い。

注記1 新製品開発などのプロジェクトで実施するもののうち,既存のプロセスで行うものについては,方針管理ではなく,日常管理(通常のプロジェクト管理)の対象とするのがよい。ただし,設計変更の大幅な低減,開発日程の大幅な短縮,新たな法的規制への対応など,既存のプロセスで行うのが難しく,新たな技術と設計方法の導入,他部門との連携の強化などのプロセスの改善と革新に取り組む必要があるものについては,方針管理の対象とするのがよい。

注記2 方針管理との関係で論じられるバランストスコアカードは,上記のような区別をしておらず,事業計画の全体をカバーするものになっている。

パフォーマンス期末必達目標期末時間従来の予測値既存のプロセスを確実に行うことでは足りない部分既存のプロセスを確実に行うことでカバーできる部分日常管理が必要な部分方針管理が必要な部分

方針管理との関係

図B.2-目的から見た日常管理と方針管理との関係

進め方から見れば,SDCA【Standardize-Do-Check-Act)サイクルに沿って「日常管理」を行っていた業務について,目標を達成する上での不足が明確となると,日常管理に加え,PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルに沿って「方針管理」として課題達成と問題解決に取り組むことになる。また,課題達成と問題解決が終了すると,得られた成果を基に標準化を行い,日常管理にいかすことになる(図B.3参照】。

SADC現状把握対策の検討と実施計画の策定要因解析目標設定効果の確認テーマ選定APCD<日常管理><方針管理における問題解決と課題達成>標準化と管理の定着使命と役割の明確化業務の分析と展開業務のプロセスの明確化プロセスの標準化管理項目と管理水準の設定異常の検出と共有,並びに応急処置異常原因の追究と再発防止

進め方の関係

図B.3-進め方から見た日常管理と方針管理との関係

方針管理は,事業計画の中の中長期経営計画とその達成のための事業戦略などと密接に関係する。ただし,方針管理は,中長期経営計画と事業戦略そのものを策定するためのものではない。中長期経営計画と事業戦略は,トップマネジメントをはじめとする組織の経営的な判断によって決まる部分が大きい。これらに基づいて実践する,期ごとの事業計画,特に改善と革新に関わる部分をマネジメントするのが方針管理である。

注記3 中長期経営計画と事業戦略の策定を含めて方針管理と呼んでいる場合もあるが,この規格では,中長期経営計画と事業戦略に基づいて期ごとの事業計画をマネジメントすることに焦点を当てている。

方針管理の三つの流れ [B.2]

方針管理は,基本的に,次に示す「展開」,「集約」と「環境変化への対応」の三つの流れで構成する【図B.4参照】。

  • 展開 組織の階層に沿って,使命,理念,ビジョンなどの組織の最上位の目的を,目的-手段のつながりを基に,より具体的な手段へと展開する。基本的には,組織の階層の上位から下位に向かって展開するが,上下左右の密接なすり合わせが必要になる。
  • 集約 各部門における目標の達成状況と方策の実施状況を確認と評価し,目的-手段のつながりを基に下位の課題と問題を上位の課題と問題へと集約するとともに,上下間で展開時に想定,設定と仮定した整合性を確認と評価する。基本的には,組織の階層の下位から上位に向かって集約するが,課題と問題に関する上下左右の密接な議論と共有が必要になる。
  • 環境変化への対応 組織の各階層において,方針に関係する外部と内部の環境条件を定常的に監視し,自部門の方針の達成と実施に影響を与えるような変化が確認された場合は,上位と下位の方針との整合性を保ちながら,臨機応変に方針を変更する。

上記のような基本構造は,目的達成のためのものであるので,それぞれの組織の状況に応じて柔軟に適応させるのがよい。例えば,ある階層から次の階層に機械的に展開せずに,直接数階層下位の階層に展開することもあれば,既存組織ではないプロジェクトチームと部門横断的な組織に展開してもよい。

「目的と手段」の論理的展開環境変化への対応目的手段目的手段目的手段目的手段

-方針管理の三つの流れ

図B.4-方針管理の三つの流れ

方針管理を構成する様々なタイプのPDCA [B.3]

方針管理は,基本的に,PDCAサイクルを継続的に回すことによって,一定の結果が確実に得られるようなプロセスとシステムを作り上げるという考え方に基づいて実施する。方針管理で回すべきPDCAサイクルは,期を単位とするものと,月,週,日などのより短い単位で行うものの幾つかのタイプがある。表B.1に典型的な例を示す。

表B.1-方針管理を構成する様々なタイプのPDCA
期を単位とする,組織全体でのPDCA期中における,各部門と各階層でのPDCA期中における予想外の環境変化に迅速に対応するためのPDCA
計画
(Plan)
組織として,今期に達成しなければならないことを方針として策定するとともに,組織内に展開し,その実現のための方策を具体化する。また,その過程において,各部門と各階層の課題と問題を集約し,方針の策定と展開にいかす。 各部門と各階層として,今期に達成すべき方針を策定するとともに,その達成のために期中の各時点で行うことに関する実施計画を立てる。 方針の達成に影響を与える組織の外部と内部の環境変化を予測し,必要な対応策を計画する。
実施
(Do)
定めた方策を確実に実施する。 実施計画どおりに実施する。 環境変化が起こった場合には,事前に策定した対応策に従って対応する。
チェック
(Check)
期末において,各部門と各階層での目標の達成状況と方策の実施状況をレビューし,集約する。未達成と未実施となったものについて原因を追究する。 期中の各時点において,当該の部門と階層での目標の未達成と方策の遅れを適時に確実に捕捉し,その原因を追究する。 環境変化に適切に対応できたかどうかを確認し,方針の達成に影響を与える予想外の環境変化を遅滞なく捉える。
処置
(Act)
再発防止策を検討し,次期の方針に反映させる。また,方針管理自体についても改善すべき点を把握し,次期の方針管理にいかす。 目標の未達成と方策の遅れに対する応急対策とばん(挽)回策を遅滞なく計画と実施するとともに,必要なすり合わせを行って,方針と実施計画を修正する。 予想外の環境変化への対応策を計画し,関連する方針と実施計画を修正する。

方針管理の基礎となるマネジメントの原則 [B.4]

方針管理を適切に実施するためには,組織の全員が,方針管理の基礎となっているマネジメントの原則について適切に理解し,これに基づいて行動する必要がある。基礎となるマネジメントの原則としては,次のようなものがある。

  • リーダーシップ リーダーシップとは,目的と方向を一致させ,人々が目標を達成することに十分に参画できる内部環境を作り出し,維持することである。方針管理の遂行にはトップマネジメントによる強いリーダーシップが求められる。ただし,方針の策定,展開と集約を行うためには,トップダウンによる指示だけでなく,ボトムアップによる提案も勘案し,自らの方針を決定することによって効果的かつ効率的な方針管理を実現することができる。
  • 重点指向 重点指向とは,目的と目標の達成のために,要因が結果に及ぼす影響を予測と評価し,優先順位の高いものに絞って取り組むことである。方針を策定するに当たっては,影響の小さい要因を諦めて,少数に絞り込むことが大切である。
  • 全員参加 全員参加は,組織の全構成員が,組織における自らの役割を認識し,組織目標の達成のための活動に積極的に参画し,寄与することである。方針管理を効果的かつ効率的に進めていくためには,全部門と全階層の参加が必要である。これは,経営への参画という意味においても重要である。ただし,個々の方針について見れば,展開されない部門と人もある。
  • プロセス重視 プロセス重視は,目標の達成状況だけではなく,結果に至ったプロセスを重視し,プロセスを確立と改善することによってパフォーマンスの向上を図ることである。方針策定に当たっては,目標だけでなく,それを達成するための方策を具体化し,最適な方策を選択する必要がある。また,期末のレビューと期中のチェックに当たっては,結果だけでなく,その方策の実施状況と対応付けて考える必要がある。
  • 事実に基づく管理 事実に基づく管理は,経験と勘だけに頼るのではなく,データに基づいてPDCAサイクルを回すことである。方針の策定に当っては,事実に基づく分析によって定量的な目標を設定する。また,思い込みではなく,目標と方策との因果関係の論理的な考察に基づいて議論し,方策を決定する。さらに,現地と現物に基づいて目標の未達成原因を追究する。

方針管理におけるマネジメントの対象 [B.5]

方針管理においてマネジメントの対象となるものとしては,次のようなものがある。

  • 成果として得られる最終の結果(経営指標など)
  • 結果を継続的に生み出していくためのプロセス(インフラストラクチャ,設備などを含む。)
  • プロセスを計画と実行する人と部門
  • プロセスで使用する情報と知的資源(ノウハウ,特許など)
  • 資金と予算
  • 顧客,パートナなどのその他の利害関係者
  • 外部環境

方針管理の対象を,成果として得られる最終の結果だけ,自組織だけなど狭く捉えることがあるが,方針管理を効果的かつ効率的に進めるには,その対象を広く捉え,適切にマネジメントする必要がある。また,品質だけを対象とするのではなく,コスト,量,納期,安全,環境,やる気など,全ての経営要素を対象とするのがよい。

附属書C (参考)方針の構成要素

方針管理でいう「方針」とは,トップマネジメントによって正式に表明された,組織の使命,理念とビジョン,又は中長期経営計画の達成を目指して,具体化した期単位の事業計画を達成するための,従来の活動では足りない部分に関する組織と部門の全体的な意図と方向付けである。

方針は,次に示す「重点課題」,「目標」と「方策」の三つで構成する。重点課題,目標と方策の例を表C.1に示す。

  • 重点課題 重点課題とは,組織として重点的に取組み達成すべき事項とそれを取り上げた背景と目的である。組織と部門の全体的な意図と方向付けを誤解なく理解するためには,具体的な目標だけでなく,何に取り組むのか,何のために取り組むのかが明確になっている必要がある。
  • 目標 目標とは,重点課題の達成に向けた取組みにおいて,追求し,目指す到達点である。達成すべき事項,並びにその背景と目的が明らかでも,いつまでに何を達成するのかについては人によって理解が異なるのが普通である。到達したかしないかを客観的に判断できるようにする必要がある。
  • 方策 方策とは,目標を達成するために選ぶ手段である。目標を達成する手段は一つではない。各自がばらばらに手段を考えたのでは,部門間の連携が難しくなる場合も多い。このため,方策についての意図と方向付けを行うことも必要である。
表C.1-重点課題,目標と方策の例
重点課題目標方策
新製品開発の強化 新製品開発件数3件(倍増) ・ 新製品開発におけるデザインレビューの充実
・ 顧客訪問によるニーズの把握
・ C社との共同開発体制の整備
市場クレームの低減 A事業分野の市場クレーム件数10件以下(30 %減) ・ 未然防止活動の徹底による製造品質の向上
・ 調達先の開拓と育成
・ 部門横断改善活動のさらなる推進
顧客支援サービスの強化 サービス満足度4.0以上(25 %向上) ・ 新たなサービスの提供
・ サービスセンターの整備と拡充

附属書D (参考)方針管理のための様式例

方針管理を効果的かつ効率的に実施することを支援する様式の例を表D.1~表D.4に示す。

なお,方針の策定,展開,実施とレビューの結果をまとめる様式だけでなく,これらのプロセスを見える化し,議論と検討を促進と支援するための様式も大切である。これらについては,それぞれの組織の実状に合ったものを工夫するのがよい。

表中の①~⑭の内容は,次のとおりである。

方針書の様式の例

図D.1-方針書の様式の例

① 様式名称,適用する期を明確にする。

② 適用する部門の責任者の氏名と承認日を明確にする。

③ 作成者の役職と氏名を明確にする。

④ 作成日を明確にする。

⑤ 修正日を明確にする。

⑥ 総ページ数を記入する。

⑦ 重点課題の番号

⑧ 重点課題を記入する。方針,部門の中期計画,現在の課題と環境の変化によって新たに発生した問題,下位からの提案又は他部門から依頼された事項の中のどれに対応するか付記しておくのがよい。

⑨ 重点課題に対する到達点を示す項目を設定し,その名称を記入する。項目の定義,計算式を付記しておくのがよい。

⑩ 目標として最終的に達成すべき値を記入する。期の途中目標を設定した場合は,途中段階での目標数値も記入するのがよい。

⑪ 期の途中で目標の達成状況を評価するための管理項目を記入する。

⑫ 方策の番号

⑬ 目標を達成するための方策を記入する。方策は複数となることが多い。

⑭ 方策を実施する担当者名を記入する。

実施計画書の様式の例

図D.2-実施計画書の様式の例

表中の①~⑮の内容は,次のとおりである。

① 様式名称,適用する期と適用する部門を明確にする。

② 適用する部門の責任者の氏名と承認日を明確にする。

③ 作成者の役職と氏名を明確にする。

④ 作成日を明確にする。

⑤ 修正日を明確にする。

⑥ 総ページ数を記入する。

⑦ 方策の番号

⑧ 方針書に示された方策を転記する。

⑨ 方策の実施状況を評価するための管理項目を記入する。

⑩ 管理項目の実績を期の途中段階で確認する時期と周期を記入する。

⑪ 実施事項の具体的活動の進捗,管理項目の実績を期の途中段階で確認し,計画どおり進まなかった場合に必要な処置をとる責任者の氏名を記入する。

⑫ 方策を,目標達成期限までの期間にどのような手順で進めるか,月単位などに区切り,具体的な実施事項を記入する。実施事項は,複数となる場合が多い。

⑬ 実施事項を行う担当者名を記入する。

⑭ 実施事項ごとに,活動期間のスケジュールを月単位などで記入する。活動する期間の位置に棒線を引く。

⑮ 実施事項の担当者の支援者を記入する。また,実施事項の進捗と管理項目の実績を記録し,確認するための表,グラフなどの資料の名称を記入する。

実施状況確認表の様式の例

図D.3-実施状況確認表の様式の例

表中の①~⑩の内容は,次のとおりである。

① 様式名称,適用する期,適用する部門を明確にする。

② 方策の番号

③ 責任者を明確にする。

④ 担当者を明確にする。

⑤ 管理項目の実績を,時間を追って見るための管理グラフを記入する。目標値と管理限界は,あらかじめ月単位など,実施計画書に記入されたチェック頻度に基づいてチェックを行う段階ごとに設定する。

⑥ 実施計画書に示した実施事項を記入する。

なお,実施の途中において,前月の見直しと対策,上司コメントによって翌月以降の計画を修正する場合は追記する。

⑦ 当月に実施した内容を記入する。

⑧ 実績が管理限界からの外れ,又は実施の遅れがある場合は,その原因を究明し記入する。

⑨ ⑧項の原因に対する対策を検討し記入する。

⑩ 上位者に当月の⑦項~⑨項について報告して評価を受け,今後の進め方の修正の有無など記入してもらう。

期末のレビュー報告書

図D.4-期末のレビュー報告書の様式の例

表中の①~⑱の内容は,次のとおりである。

① 様式名称,適用する期と適用する部門を明確にする。

② 適用する部門の責任者の氏名と承認日を明確にする。

③ 作成者の役職と氏名を明確にする。

④ 作成日を明確にする。

⑤ 総ページ数を記入する。

⑥ 重点課題の番号

⑦ 方針書の対応する重点課題を転記する。

⑧ 方針書の対応する目標となる項目を転記する。

⑨ 方針書の対応する目標値を転記する。

⑩ 目標値に対する期末の実績値を記入する。

⑪ 目標の達成状況の判定結果を○,△,×などで記入する。

⑫ 方策の番号

⑬ 方針書の対応する方策を転記する。

⑭ 方策の管理項目を記入する。

⑮ 方策と実施計画の実施状況の判定結果を○,△,×などで記入する。

⑯ 目標の達成状況と方策と実施計画の実施状況とを総合的に判断し,表2のタイプA~タイプDのいずれに該当するかを記入する。

⑰ 目標の達成状況と方策と実施計画の実施状況との関係について差異分析し,成功要因,失敗要因を見極めて記入する。また,成果については,当期の活動を通して改善又は新たに開発した業務の仕組み,固有技術などを記入する。

⑱ ⑰項の内容を踏まえて,次期への課題として取り上げるべき事項を記入する。

附属書E (参考)方針管理の自己評価

方針管理を組織的に推進するためには,定期的にその実施状況を評価し,その結果に基づいてどのような側面を重点化すべきかを判断することが必要である。表E.1は,このような評価に役立つ一つの枠組みを提供している。この表は,この規格の本体で推奨する活動のステップに応じた評価項目を示しており,この各々について「第1段階(悪い)」から「第5段階(良い)」のどのレベルにあるのかを確認することによって,どのような点が遅れているのか,進んでいるのかが客観的に評価できるようになっている。

評価の実施に当たっては,複数人による確認を行い,その平均値,メジアンなどを用いる工夫をするとよい。また,各々の評価項目に重みを付けて点数化し,ステップごとの平均値を求めてレーダーチャートに表すことでどこに問題があるかを把握できる。さらに,部門間の点数の差異を比較することで実態をより詳細に把握できる。

なお,表E.1は,あくまでも方針管理の「活動面」に焦点を合わせている。方針が達成されているかどうか,方針とした項目について大幅な改善が達成されているか,競合他組織をりょうが(凌駕)するレベルを達成しているか,方策が計画どおり実施されているかなどの結果系についても併せて評価を行い,活動面のレベルアップに応じて狙いとする成果が得られているかどうかについても確認することが必要である。

表E.1-方針管理のレベル評価基準
区分 評価項目 評価基準
レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5
[5.1]部門が責任をもつ項目に関する中期計画は,組織の中長期経営計画と密接な関連をもっているか? 部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めていない。部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めているが,内容は組織の中長期経営計画と関連の薄いものになっている。部門が責任をもつ項目に関して,組織の中長期経営計画と関連する中期計画を定めている。しかし,両者の関連はそれほど強くなく,互いに矛盾する又は関係が明確でない内容が含まれている。トップマネジメントとの密接なすり合わせを行っており,部門が責任をもつ項目に関して,組織の中長期経営計画と密接に関連する中期計画を定めている。ただし,他部門とのすり合わせが十分でなく,他の項目に関する中期計画とは十分な連携が図られていない。部門が責任をもつ項目に関して,組織の中長期経営計画と密接に関連する中期計画を定めている。また,他の項目に関する中期計画とも密接な連携が図られている。
部門が責任をもつ項目に関する中期計画は,将来の方向付けを明確に示すものになっているか?部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めていない。部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めているが,抽象的で具体性に乏しい。部門が責任をもつ項目に関する,具体性のある中期計画を定めている。しかし,内容は過去の実績の延長にすぎない。部門が責任をもつ項目に関する,具体性があり,挑戦的な中期計画を定めている。ただし,十分重点化できていない。部門が責任をもつ項目に関する,具体性があり,挑戦的かつ重点化された中期計画を定めている。
市場の環境と部門の現状を分析し,部門が責任をもつ項目に関する中期計画に反映しているか?部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めていない。部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めているが,市場動向,技術動向,社会動向などの部門を取り巻く環境,と部門の経営資源の実態に関する情報を収集できていない。部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めるに当たって市場動向,技術動向,社会動向などの部門を取り巻く環境,と部門の経営資源の実態に関する情報を収集している。しかし,収集している情報の量が限られており,必要な分析ができていない。部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めるに当たって市場動向,技術動向,社会動向などの部門を取り巻く環境,と部門の経営資源の実態に関する情報を収集し,分析している。ただし,時代とともに新たに浮かび上がってくる課題を明確にできないなど分析が弱く,精度のよい予測ができない。部門が責任をもつ項目に関する中期計画を定めるに当たって市場動向,技術動向,社会動向などの部門を取り巻く環境,と部門の経営資源の実態に関する情報を十分収集し,的確な分析を行っている。また,分析結果を中期計画に反映している。
[5.2.2]部門方針は,組織の中長期経営計画達成における部門の使命と役割を考慮したものになっているか?部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,内容は,部門の使命と役割と関連が薄いものになっている。部門の使命と役割と関連する部門方針を定めている。しかし,組織の中長期経営計画達成から見た場合,使命と役割のうち,何が重要かを十分考えることができていない。組織の中長期経営計画を達成する上で部門が果たすべき使命と役割を考え,これと密接に関連する方針を定めている。ただし,考慮が不足しているために,期ごとにふらついている部分がある。組織の中長期経営計画を達成する上で部門が果たすべき使命と役割を考え,これと密接に関連する方針を定めている。部門方針は期ごとにふらつかず,一貫性のあるものになっている。
部門方針と上位方針との関連は,明確か?部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,上位方針を受ける形になっていない。上位方針を受けて部門方針を定めている。しかし,すり合わせが不十分で両者の関連が明確になっておらず,上位方針と関連のない重点課題,目標と方策が多く含まれている。上位とのすり合わせを十分行い,上位方針との関連を明確にした部門方針を定めている。ただし,部門方針の上位方針に対する寄与の大きさが曖昧になっており,有効性の少ないものが含まれている。徹底した上位とのすり合わせを行い,上位方針との関連を明確にした部門方針を定めている。また,部門方針の上位方針に対する寄与度を明確にしている。結果として,部門方針は上位方針の達成に有効なものになっている。
部門方針と他部門の活動との関連について検討しているか?部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,他部門に与える影響,他部門から受ける影響について考慮していない。部門方針が他部門に与える影響,他部門から受ける影響について考慮している。しかし,すり合わせが十分できておらず,連携が適切に図れていない。他部門とのすり合わせを十分行い,部門方針が他部門に与える影響,他部門から受ける影響について考慮している。ただし,考慮が不足しており,必要な連携が図れていない点がある。徹底した他部門とのすり合わせを行い,部門方針が他部門に与える影響,他部門から受ける影響の大きさを明確にしている。また,影響が大きい点について密接な連携を図っている。
下位からの提案を検討しているか?部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,下位からの提案を聞いておらず,また,提案させることができていない。部門方針を定める際に聞いており,また,提案させることができている。しかし,下位の提案を部門方針にいかしていない。下位からの提案を聞いて部門方針にいかしている。ただし,提案の有効性と相互関係を考慮し,一貫性のある部門方針にすることができていない。下位からの提案を聞いて部門方針にいかしている。また,提案の有効性と相互関係を考慮し,一貫性のある部門方針にすることができている。
部門方針は,挑戦的で,重点化されているか?部門方針を定めていない。部門方針を定めているが,抽象的で具体性に乏しい。具体性のある部門方針を定めている。しかし,内容は過去の実績の延長にとどまっており,重点化されていない網羅的なものとなっている。具体性があり,挑戦的で,重点化された部門方針を定めている。ただし,一部そうなっていない部分がある。具体性があり,挑戦的で,重点化された部門方針を定めている。
[5.2.3] 部門方針の展開において,上下,左右のすり合わせを行っているか?部門方針を展開していない。 部門方針を展開しているが,上下,左右のすり合わせの場を設けていない。 部門方針の展開に際して,上下,左右のすり合わせの場を設けている。しかし,議論が十分に行われず,上位者が方針を押し付ける形となっている。結果として,上位の方針の意図が十分理解されていなかったり,下位の実状と意見を十分に反映できていない。 部門方針の展開に際して,上下,左右のすり合わせの場を設けており,上位者は方針を説明し,下位者は現場の実状と意見を提案する双方向の議論の場になっている。ただし,上位者がリーダーシップを発揮して,議論をまとめることが十分できていない。 上下,左右のすり合わせの場を設けており,上位者は方針を説明し,下位者は現場の実状と意見を提案する双方向の議論の場になっている。また,上位者がリーダーシップを発揮して議論をまとめ,重点課題,目標と方策を連携のとれた形に決定できている。
下位の重点課題,目標と方策によって上位の重点課題,目標と方策が効果的かつ効率的に達成できるかを検討しているか? 部門方針を展開していない。 部門方針を展開しているが,重点課題,目標と方策に関する上位と下位の関連を議論していない。 下位の重点課題,目標と方策によって上位の重点課題,目標と方策が達成されるかどうかを検討している。しかし,両者の関連が系統図などを用いて明確にされておらず,定性的な議論にとどまっている。結果として,両者は関連の薄いものになっている。 上位と下位の重点課題,目標と方策の関連を系統図などによって明確にした上で,結果過去の実績の分析などを踏まえて,下位の重点課題,目標と方策によって上位の重点課題,目標と方策が達成されるかどうかを検討している。ただし,両者の関係について十分理解できておらず,効果的かつ効率的でない重点課題,目標と方策がある。 過去の実績の分析などを踏まえて,下位の重点課題,目標と方策によって上位の重点課題,目標と方策が達成されるかどうかを徹底して検討している。両者の関係について十分理解できており,下位の重点課題,目標と方策が上位の重点課題,目標と方策を達成する上で効果的かつ効率的なものとなっている。
重点課題,目標と方策は,下位になるに従って,より具体的になっているか? 部門方針を展開していない。 部門方針を展開しているが,下位の重点課題,目標と方策の内容は,上位の重点課題,目標と方策とほとんど変わりがない。 下位の重点課題,目標と方策は,上位の重点課題,目標と方策を分解又は要因系に展開したものになっている。しかし,最下位の方策を見ても具体的な実現手段が示されていない。 重点課題,目標と方策は下位になるにつれて具体的なものとなっており,最下位の方策を見ると具体的な実現手段が示されている。ただし,全ての方針が一律に最下位の方策まで展開されている。 重点課題,目標と方策は下位になるにつれて具体的なものとなっており,最下位の方策を見ると具体的な実現手段が示されている。また,必要に応じて上位におけるプロジェクト活動などが計画されている。
[5.2.4] 最下位の方策について,具体的な活動項目,日程などを明確にした実施計画書が作成されているか?最下位の方策について実施計画を検討していない。 最下位の方策について実施計画を検討しているが,検討した結果を実施計画書としてまとめていない。 最下位の方策について実施計画書を作成している。しかし,各々の計画書の内容を見ると,活動項目,日程,担当者,計画どおりに進まなかった場合に処置をとる責任者などが具体化されていないものが多い。 最下位の方策について,活動項目,日程,担当者,計画どおりに進まなかった場合に処置をとる責任者などを明確にした実施計画書を作成している。ただし,分析を行って対策案を検討することが必要なものなど,実施が難しいものとそうでないものを区別していない。 最下位の方策について実施計画書を作成しており,各々の計画書において活動項目,日程,担当者,計画どおりに進まなかった場合に処置をとる責任者などが具体化されている。また,実施が難しいものについては,他と区別している。
実施計画を実施するために必要な人,費用,時間などを検討しているか? 最下位の方策について実施計画を検討していない。 最下位の方策について実施計画を検討しているが,実施計画を達成するためにどの程度の人,費用と時間が必要なのか議論していない。 実施計画を達成するためにどの程度の人,費用と時間が必要か検討している。しかし,利用可能な人,費用と時間と対比し,問題を顕在化させていない。 実施計画を達成するために必要な人,費用と時間と,利用可能な人,費用と時間とを対比させ問題がないか検討している。ただし,明らかとなった問題に対する具体的な対応策を,上位者を交えて議論し,決めていない。 各々の実施計画を達成するために必要な人,費用と時間と,利用可能な人,費用と時間とを対比させ問題がないか検討している。また,明らかとなった問題に対する具体的な対応策を,上位者を交えて議論し,決めている。
実施計画の実施において,必要に応じて他部門の協力を得ているか? 最下位の方策について実施計画を検討していない。 最下位の方策について実施計画を検討しているが,必要に応じて他部門の協力を要請していない。 最下位の方策について実施計画を検討しており,必要に応じて他部門の協力を要請している。しかし,説得の資料とデータが不十分なため要請された部門の協力を得ることができていない。自部門としても十分協力できていない。 必要に応じて他部門の協力を要請しており,要請された部門の納得も得られている。また,自部門としても協力している。ただし,人,費用と時間の制約があり,思うように進んでいないところがある。 必要に応じて他部門の協力を要請しており,要請された部門では対応する活動が実施されている。また,必要に応じて部門間にわたるプロジェクトチームを編成するなど人,費用と時間の柔軟な運用を行っている。
各々の重点課題,目標と方策について,管理項目の抜け落ち,重複なく設定しているか? 各々の重点課題,目標と方策について,管理項目を設定していない。 一部の重点課題,目標と方策について,管理項目を設定しているが,全体的には管理項目を設定していないものが多い。 各々の重点課題,目標と方策について,管理項目を設定している。しかし,相互の関連についての検討が不十分で,管理項目の重複と抜け落ちが多い。 各々の重点課題,目標と方策について,重複と抜け落ちを考慮して管理項目を設定している。ただし,尺度の作り方が適切でなく,有効な管理項目となっていない場合がある。 各々の重点課題,目標と方策について,重複と抜け落ちを考慮して管理項目を設定している。また,尺度の作り方を工夫することで,有効な管理項目となっている。
レベルの基本的な考え方:レベル1. 考え方と仕組みがない,レベル2. 正しく理解できていない,レベル3. 正しいが役に立っていない,レベル4. 役に立っている,レベル5. 良い工夫がされており大いに役立っている。

マネジメント関連 主なJIS規格 一覧

規格番号 規格名称
JISQ10001品質マネジメント-顧客満足-組織における行動規範のための指針の規格
JISQ10002品質マネジメント-顧客満足-組織における苦情対応のための指針
JISQ10003品質マネジメント-顧客満足-組織の外部における紛争解決のための指針
JISQ10019品質マネジメントシステムコンサルタントの選定とそのサービスの利用のための指針
JISQ13485医療機器-品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項
JISQ17021-3適合性評価-マネジメントシステムの審査と認証を行う機関に対する要求事項-第3部:品質マネジメントシステムの審査と認証に関する力量要求事項
JISQ9000品質マネジメントシステム-基本と用語の規格
JISQ9001品質マネジメントシステム-要求事項の規格
JISQ9002品質マネジメントシステム-JIS Q 9001の適用に関する指針
JISQ9004品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針
JISQ9005品質マネジメントシステム-持続的成功の指針
JISQ9023マネジメントシステムのパフォーマンス改善-方針管理の指針
JISQ9027マネジメントシステムのパフォーマンス改善-プロセス保証の指針
JISQ9091品質マネジメントシステム-プラスチック再生材料-事業プロセスパフォーマンスに関する指針
JISQ9100品質マネジメントシステム-航空,宇宙と防衛分野の組織に対する要求事項

用語、要求事項、パフォーマンス改善、監査、プロジェクトマネジメント、顧客満足、コンサルタント、セクター別の適用〔医療/航空宇宙/計測/プラスチック再生材料〕、適合性評価〔認定/マネジメントシステム認証/自己適合宣言〕

鉄道線路、電車線路、鉄道設備、信号・保安機器、鉄道車両

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